ちくま文庫 兄のトランク

宮沢 清六【著】

筑摩書房（1991/12発売）

• サイズ 文庫判／ページ数 275p／高さ 15X11cm
• 商品コード 9784480025746
• NDC分類 910.268
• Cコード C0195

出版社内容情報

兄・宮沢賢治の生と死をそのかたわらでみつめ、兄の死後も烈しい空襲や散佚から遺稿類を守りぬいてきた実弟が綴る、初のエッセイ集。

短い生涯を流星のように駆けぬけた兄・宮沢賢治の生と死をそのかたわらで見つめ、兄の死後も烈しい空襲や散佚から遺稿類を守りぬいてきた実弟による初めての文集。昭和１４年に変名で発表した幻の詩論「『春と修羅』への独白」をはじめ、４５年の長きにわたって発表しつづけてきた兄の想い出や作品についてのエッセーを収録。文庫化に当たり新たに二篇を加え、決定版とした。
この本の目次
虫と星と
麓の若駒たち
曠野の饗宴
最初の手紙
映画についての断章
兄とレコード
録音に寄せて
１１月３日の手紙
肥料設計と花壇設計
兄のトランク
『春と修羅』への独白
「修羅の渚」にて
「イギリス海岸」への独白
燻浄された原稿
花巻から山小屋までの高村先生
焼け残った教材絵図について
早春について
極東ビヂテリアン大会秘録
イタリヤの友より
銀河鉄道の車掌さん
賢治の世界
ナッパ先生の実験
「臨終のことば」から
兄賢治の生涯

内容説明

短い生涯を流星のように駆けぬけた兄・宮沢賢治の生と死をそのかたわらで見つめ、兄の死後も烈しい空襲や散佚から遺稿類を守りぬいてきた実弟による初めての文集。昭和１４年に変名で発表した幻の詩論「『春と修羅』への独白」をはじめ、４５年の長きにわたって発表しつづけてきた兄の想い出や作品についてのエッセーを収録。文庫化に当たり新たに二篇を加え、決定版とした。

目次

虫と星と
麓の若駒たち
曠野の饗宴
最初の手紙
映画についての断章
兄とレコード
録音に寄せて
１１月３日の手紙
肥料設計と花壇設計
兄のトランク
『春と修羅』への独白
「修羅の渚」にて
「イギリス海岸」への独白
燻浄された原稿
花巻から山小屋までの高村先生
焼け残った教材絵図について
早春について
極東ビヂテリアン大会秘録
イタリヤの友より
銀河鉄道の車掌さん
賢治の世界
ナッパ先生の実験
「臨終のことば」から
兄賢治の生涯

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

[Willie the Wildcat]

思い出。映画にクラシック・・・。戦後帰宅した際、表題のトランクに作品群を納めていた。足掛け6年は蔵に埋もれたままとなるが、死語高村氏・横光氏の尽力で全集となる。著名な「雨ニモマケズ・・・」も未発表の可能性！？大津波などの災害や島地大等の経典との出会いは、もれなく氏の作品に影響を与えた感。臨終の言葉・・・、様々な解釈はあれどやはり”再生”そして、その先には世界平和という感。イギリス海岸など、次男と訪れた春の二人旅行を思い出す。

2017/11/16

[aika]

宮沢賢治の実弟・清六さんによる様々な文章がまとまった一冊。著者ご自身にも文学の才能と、古今東西の文学や音楽に精通した知識の深さ、何よりも、兄・賢治への愛情を感じました。冷害に苦しむ農民たちのために工夫を重ねて肥料を開発した在野の科学者としての賢治。不幸な災害をどうにかして食い止め、明るい世界へと歩を進めたい『春と修羅』に込められた祈り。賢治のいう「世界」は、生きとし生けるものすべてを包む宇宙であるという記述が目を惹きました。原稿でパンパンのトランクを担ぐ賢治に出会えそうな花巻を、いつか訪れてみたいです。

2023/11/20

[ポップ]

賢治の意志を継いだ、弟の清六さん。花巻空襲から遺稿を守り、宮沢賢治作品の出版に至った、彼の貢献は計り知れません。表題作の兄のトランク、映画、レコードなどの思い出話、作品の解説と、才筆にも目を見張ります。賢治の理解者には、妹と父（反目は裏返し）が挙げられます。しかし、兄が目を輝かせて童話を読み聞かせ、洗礼を受けた弟は1ファンとなり、生涯を捧げる原動力になったのです。ゴッホとテオ同様に弟無くして兄無し、縁の下の力持ちのお手本です。97歳の天寿を全うし、銀河の何処かで、兄と語らっているのでしょう。

2018/09/27

[❁Lei❁]

賢治の弟による回想録。賢治が喜びの声をあげながら走ったり、好きなことに一生懸命になる様子が脳裏に浮かぶようでした。彼の生き生きした一面を知れて大満足です。ファン必携の書。

2022/07/05

[クラムボン]

清六は兄とは八才離れていたが、これ以上無い理解者だった。永い間兄の傍らにいて、或る人たちからは嘲笑され理解されない賢治を、弟として何も出来ず気の毒でしかたなかったと振り返る。臨終の際に「遺言することはないか」と父に問われ、国訳妙法蓮華経を一千部作り知己に配ること…と答える。経本裏に『私の生涯の仕事は此経をあなたの御手許に届け、…無上道に入られん事をお願いする。』と書く。父は「お前も大した偉いもんだ」と言い、「おれもとうとうお父さんに褒められた」と笑った賢治。最期には父も彼の生き方に敬意を持ったと思う。

2023/10/08