感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
かんやん
14
昔々、荷風に惹かれて旧玉の井のあたりを散策したのを思い出す。もうすっかり情緒は失われていたけれども。この作品集は、少年キヨシを中心に私娼窟界隈で飲み屋を営む一家のささやかな日常を描いたもので、綺譚めいたところはない。墨東綺譚(これも綺譚じゃない)に因んだものか。それでも、迷路じみた町の描写、お馴染みの「ぬけられます」の看板や木造家屋の板の木目まで詳細に描かれた絵に惹きこまれるうちに、何か怪しさが漂うのは、少年キヨシの視点で大人の世界を描いているから。酒も、女も、哀しみも知らない。2017/06/02
fseigojp
14
戦前の東京下町の赤線地帯で居酒屋を営む一家の少年が主人公 昭和28年生まれの地方都市の街中で生まれたのに、妙に懐かしい もう焼け跡なんかなかったのに2015/08/27
アズル
14
ちょっと理解できませんでした…。人物の絵が判別しづらくて、話のリズムもゆっくりで、淡々とした良さは伝わってきたのですが、イマイチのめり込めなかったです。また時間を置いてから、読んでみようと思います。2014/10/04
Bo-he-mian
13
漫画家・滝田ゆうは俗称「玉の井」として知られる私娼街で育った。永井荷風『墨東綺譚』の舞台として知られる町である。本作は滝田の少年時代を主人公「キヨシ」に重ねながら描いた、ノスタルジーあふれる漫画。ベーゴマやメンコやけん玉、屋根の上の物干し台に長屋などの懐かしい風景の中に、娼家がごく自然に溶け込み、子供の世界も、大人の世界での出来事も分け隔てなく温かい目線で見つめた、唯一無二の名篇である。戦火で焼失した玉の井のありし日を知ることができる貴重な資料として、赤線・色街マニアの方々に支持される本でもある。2018/07/08
犬養三千代
10
再読。 昭和の前半、戦争の足音が日増しに高くなっていく東京下町玉ノ井と呼ばれた赤線の中のスタンドバーを営む一家の少年の目を通した掌説のような漫画。 切なさ、哀しみ、笑いもあり当時の風俗を優しい線で描いている。 読後は心の中の澱が鎮まったり、漣のように押し寄せたりする。 親子、夫婦、家族の情愛も微笑ましい。また、読むだろうな。2017/11/19