内容説明
都市に“トマソン”という幽霊が出る!?街歩きに新しい楽しみを、表現の世界に新しい衝撃を与えた“超芸術トマソン”の全貌が、いまここに明らかにされる。多くの反響を呼んだ話題の本に、その後の「路上観察学」への発展のプロセスと、新発見の珍物件を大幅に増補した決定版。
目次
町の超芸術を探せ!
トマソンを追え!
2階家の印鑑
空飛ぶ御婦人
ビルに沈む町
馬鹿と紙一重の冒険
トマソンの母、阿部定
群馬県庁のトマソン
高田のババ・トライアングル
キノコ型の原爆タイプ
おとなのかいだん
1/6の電柱
新型ブリキヘルメット発見!
パリの絆創膏
華麗なるファール大特集
そーっと息をしている死体
阿部定の歯型のある町
トマソン、大自然に沈む
都市のポリープ
第5世代のトマソン
コンクリート製の亡霊
命がけで突っ立っている死体
中国トマソン爆弾の実態
匿名希望のトマソン物件
ベンチの背後霊
愛の鬼瓦
1 ~ 2件/全2件
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
takaC
82
今月の菅原文太さん、先月の高倉健さん並に、先々月の赤瀬川原平さんの訃報は自分にはショッキング。こんなマジメなバカげた研究は他の誰にも真似できない。改めて合掌。2014/12/02
へくとぱすかる
73
4年半ぶりの再読。高所恐怖のある人は、例の飯村写真を震えずには読めないだろう。すっかり定着した路上観察だが、その対象は絶滅危機に直面している。何もかも新しく更新された時代、おもしろい物件が稀少になるのは何ともしかたがない。「VOW」とちがって、トマソンは文字の物件ではなく、建築にひそむ「超芸術」を楽しむスタンスだったことも大きい。本書は、そんな80年代の考現学の一大ウエーブを伝える貴重な記録。著者・赤瀬川氏と時代考証家・杉浦氏の21世紀が、藤森氏の予言解説のようにならなかったことが読者としては非常に残念。2020/01/18
へくとぱすかる
72
再読。路上観察学の夜明けはここから始まった。初版から30年という歳月が流れた今、これは昭和末期の消えゆく戦前・戦後の建築、もしくは土地付属物の痕跡に美を見いだす、一種のレトロ趣味にもとづく芸術運動として評価できるだろう。果たして今、トマソンはあるだろうか。超芸術として見いだすのはあくまでも観察者の側であるから、すべてはわれわれ自身の感性にかかっている。21世紀の若い世代は果たして路上観察をおもしろいと感じるだろうか。トマソンのまいた種は数多いし、方法論を残している。それが着実に成長していることを祈りたい。2015/07/06
mayumi225
50
大学生の頃,何かのきっかけで「路上観察学」を知って,しばらく東京の小道を歩きながら町中のおもしろ物件を探してました。これはその源流となった超芸術トマソンの連載。役に立つために生まれたはずの人工物なのに,時代のエアポケットに落ちて,無用の美を醸し出す,トマソン。もう最初の数章が本当に楽しい!でも読む内にだんだん慣れてきて,ちょっとトマソン倦怠期がきます。そう思った頃に,原平さんが自らその淋しさを口にする。そして最後は,原平さんを追悼する藤森照信のあとがき。時は移ろう。トマソンも時代も人も,一期一会なのだ。2018/06/24
ばりぼー
47
25、6年ぶりの再読。初めてトマソン第1号の「純粋階段」を見た時の衝撃を覚えています。「何だこれー⁈」と声が出ました。街に残る無用物件の数々を観察し、「トマソンとは人工空間に発生する歪みのようなもの」と、その超芸術性を紹介してくれています。文庫の表紙になっている無用エントツの一件「馬鹿と紙一重の冒険」では、笑顔も凍りつきました。恐ろしいことに、エントツの上に手放しで立ってます…。これらを単純明快なギャグで「街の変なもの」として取りあげた「VOW」シリーズもありますが、あくまでも路上観察の元祖はこちらです。2013/10/05