内容説明
網野善彦、鵜飼哲、M・コンデほか気鋭の執筆陣による、「単一文化」神話の徹底的な否定。均質な一体性をもった文化など存在しない。文化間に生じている葛藤やあつれきのみならず、ある文化それ自体に発している軋みに耳を澄ますこと―覇権国家のイデオロギーとしての文化多元主義・文化相対主義を踏み越え、あらゆる単一文化神話を解体し、カリブの海から、アジアの植民地の廃墟から、複数の声、複数の記憶を解き放つ、果敢な試み。
目次
「海」から歴史を読みなおす―カリブ海・日本海・地中海
1 ポストコロニアリズムの功罪(ポストコロニアリズム;文化の多様性の解釈と表現をコントロールする者は誰か?;中国現代文化論とポストコロニアリズム言説 ほか)
2 クレオールの構え(『クレオール性礼賛』を心理批評の面から見渡すと;アンティルのアイデンティティと「クレオール性」;クレオールとジェンダー ほか)
3 文化翻訳のポリティクス(複数文化をめぐる言説の歴史化にむけて;木々の音節で私の名前を書くための語あるいはブラスウェイトにおける言語の問題設定;「人種」の解体と国民の記憶 ほか)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
スミス市松
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九十年代前半から日本でも積極的に紹介された「クレオール性」への批判的論考をまとめた論文集。主にシャモワゾー、コンフィアン、ベルナベが著した『クレオール礼賛』や今福龍太ら日本の紹介者の「楽観性」が俎上に挙げられており、九八年の出版だが現在でも一定の有効性をもつ興味深い内容である。指摘も鋭い。例えば、「文化的混淆」がその元となる文化の純粋性を作り出す危険性(北原恵)、「クレオール性」という文化的アイデンティティの称揚が政治の価値を貶め結果として島の人々がグローバル経済に従属してしまう可能性(J・ダオメ)。2018/10/13
moti moti
0
四半世紀前の本。状況は当時より良くなっているのか悪くなっているのか分からないが、素人が論文集に挑んだ結果、やっぱりよく分からなかった。著者はガブリエルアンチオープ氏に網野善彦氏、レゲエ好きとしては外せない鈴木慎一郎氏、マリーズコンデ氏など。クレオールは楽観的だと批判するものもあれば、そこに可能性を見出しているものもあった。仏語圏と英語圏の研究者間の微妙な温度差みたいなものも面白かった。小難しくてかっこいい単語が羅列されているだけで、なに言ってるのかわからない文章もあった。2023/08/17