内容説明
ある資産家の家に家庭教師として通う聡子。彼女の前に屋敷の離れに住む青年が現れる。ときに荒々しく怒鳴りつけ、ときに馴れ馴れしくキスを迫り、ときに紳士的に振る舞う態度に困惑しながらも、聡子は彼に惹かれていく。しかしある時、彼は衝撃の告白をする。「僕は、実際には存在しない男なんです」。感涙必至の、かつてない長編恋愛サスペンス。
著者等紹介
百田尚樹[ヒャクタナオキ]
1956年大阪府生まれ。放送作家として「探偵!ナイトスクープ」などのテレビ番組で活躍後、2006年に『永遠の0(ゼロ)』で作家デビュー。13年には『海賊とよばれた男』で第一〇回本屋大賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
1 ~ 5件/全5件
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
HIRO1970
496
⭐️⭐️⭐️百田さんは8冊目です。私的には安定した面白さがあるのでまた手に取ってみました。本作は内容的には不妊と旦那の浮気に悩む女性の背徳の不倫の話ではありますが、解離性同一性障害と言うとてもレアな俗に言う多重人格疾病の治癒過程の男性との悲恋話であり、日本の不況が続いている昨今では良くある女性の再社会進出の話でもありました。女性が主人公である為か、私はそれ程感情移入は出来ませんでしたが、世の中の他の半分の女性陣が作者の思惑通りに惹き込まれたのか?何となく評価が気になる作品でした。2016/05/27
Yunemo
356
まず、百田氏の取り上げる素材の広さに感嘆。当方、ビリー・ミリガンと直近に出会ったために、いろいろな場面で引き摺りの気持が強かった事実があります。本作品、あくまでフィクション、身に沁みてはいたのですが。絶望的な恋愛を、頭で理解しながら感情が許さず、不合理な情熱に駆られてしまう。オリジナルな人格じゃなく、消滅に向かう特定人格に惹かれてしまう。というそれぞれの矛盾。ノンフィクションでは表現できない部分を、恋愛という面に絞って、それにしては悲しすぎます。冷静なままで読み切れない、身につまされて読了というのが本音。2014/09/07
三代目 びあだいまおう
309
『僕は実際には存在しない男なんです』屋敷に家庭教師として通うことになった聡子。季節の移ろいを感じる素敵な庭である日、突然激昂する青年と遭遇、植木鉢を投げつけられる。しかし後日偶然再会する青年は、前回の出会いを微塵も覚えておらず、そればかりかまるで別人!解離性同一性障害、一人の人間に複数の異なる人格を宿す青年はいわゆる多重人格。聡子は青年に興味を抱き、やがてその内の1つの人格を愛する。でも同じ外見の別人格は愛せない。迫り来る、破局でも死別でもない永遠の別れ。心理描写や苦悩のリアリティーが私を唸らせる‼️🙇2020/02/13
Hitoshi Mita
214
解離性同一性障害の男性のある一つの人格に惹かれていく聡子。その人格は元の人格の理想とする男性。多重人格の中に色んな人格が現れる。多重人格になる理由は子どもの頃に受けた虐待が原因だった。酷い虐待を受ける間、他の人格がその苦痛を引き受けてくれる。そこからどんどん派生していく多数の人格。その中の一人に狂おしいほどの恋をする聡子。治療を受け、最終的に一つの人格に統合されなければならないのに、本来の人格とは違う人格に恋をして、統合されることによって消え去る事をよしとしない。それってどうなのって思ってしまった。2014/06/17
佐々陽太朗(K.Tsubota)
182
次はどうなるのか気になり、ぐんぐん読み込んだ。一気読みである。しかし興味は持てるが感動がない。おそらく登場人物に自己を投影できないからだろう。同じことは『モンスター』でも感じたのだが、ハラハラさせられるTVドラマを視ている気分だった。小説は読者に感動を与えなければならないというルールはない。物語として充分読ませるし、興味を惹かれたのも事実だが、百田氏ならこれに感動をのせることが出来たのではないかと思うと少し残念。百田さん、私、無理を言ってますか?2014/06/10