出版社内容情報
日本幻想文学集成 33
小栗虫太郎 著
松山俊太郎 編
ダッタンの暗黒地域を最初に踏破した男の冒険をたどる「海螺斎沿海州先占記」。中国南の〈人外魔境〉にいどむ「紅軍巴蟆を越ゆ」。小栗虫太郎の出発点ともいうべき傑作「完全犯罪」。全3編を収録。
松山俊太郎 (マツヤマシュンタロウ)
1930年東京都生まれ。インド学者、幻想文学研究家。英語やサンスクリット語の他、フランス語やアラビア語などにも堪能な「異能の人」。女子美術大学教授、國學院大學講師、多摩美術大学講師、美学校講師などを歴任。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
藤月はな(灯れ松明の火)
13
「完全犯罪」は本格推理小説としては上玉でした。「黒死館殺人事件」をなぜか彷彿させる犯人の動機の遣り切れなさが印象的でした。残りの2篇は現地の土と風の匂いが感じられるような確かな描写と右往左往する儚き人間のカタルタシスの対照が心に残ります。2012/03/18
kuroshior
1
緻密な土地設定・生々しくぬるぬるで幻惑的2008/12/06
ネコ虎
0
初めての小栗。「黒死館殺人事件」を読むための予備的な地ならし。時代のせいもあるが、読みづらい。でも小栗独特の雰囲気は味わえた。「完全犯罪」は推理小説で、かなり強引な仕掛けではあるが、天才の片鱗を見せている。他の二編(「紅軍巴蟆を越ゆ」「海螺斎沿海州先占記」)は推理ものではないものの、独特な世界を思わせたが、文体に慣れないと楽しむまではほど遠い。 なお、国書刊行会の日本幻想文学集成シリーズはまだ2冊目だが、著名作家の短編集としてはユニークなものが選ばれているので、今後も読み続けたい。 2016/01/12
ks3265
0
『黒死館殺人事件』は何回も読んだ。2回目は引用されてる書名や物など、実在の物かと調べてもみた。彼の博識に驚かされた。今回図書館で何気なく見つけた本。彼がこんな幻想的な小説を、それも大陸を舞台にした小説を書いていたのは知らなかった。カタカナの名前が多いせいか、ちょっと読みにくかったが、彼の博識ぶりはさすがだ。しかし今回はいちいち調べない。私も少しは過去の知識も増えたから。やっぱり小栗虫太郎は偉大な作家だ。2023/03/15