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内容説明
アルキメデスの著作を収めた現存する唯一の写本、C写本。本書ではそこから解読された驚くべき発見の数々と、この奇蹟の写本がどのように幾世紀も生き延びたのかが語られる。空前の歴史ミステリー。
目次
アメリカのアルキメデス
シラクサのアルキメデス
大レースに挑む第1部 破壊から生き残れるか
視覚の科学
大レースに挑む第2部 写本がたどった数奇な運命
一九九九年に解読された『方法』―科学の素材
プロジェクト最大の危機
二〇〇一年に解き明かされた『方法』―ベールを脱いだ無限
デジタル化されたパリンプセスト
遊ぶアルキメデス―二〇〇三年の『ストマキオン』
古きものに新しき光を
著者等紹介
ネッツ,リヴィエル[ネッツ,リヴィエル][Netz,Reviel]
スタンフォード大学教授で専門は古代科学。アルキメデスに関する第一人者であり、アルキメデスのパリンプセストの解読編集作業を担当している
ノエル,ウィリアム[ノエル,ウィリアム][Noel,William]
ウォルターズ美術館で写本・稀覯本を扱う学芸員。アルキメデスのパリンプセスト・プロジェクトのディレクターを務める
吉田晋治[ヨシダシンジ]
翻訳家。1972年生まれ。東京大学理科一類中退。現在は翻訳学校フェロー・アカデミーで講師を務める(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
absinthe
119
中世の写字生は羊皮紙が貴重で高価だったため、古い写本を消して新たに書き込んだという。消された痕跡にアルキメデスの数学本らしきものが見つかる。写本は数奇な運命をたどり、偶然にナチスの焚書も逃れ、現代に蘇った。まるでフィクションのように読み応えがあるノンフィクション。解読に携わった研究者のドラマ、使用された最先端の解読装置なども詳しく書かれ面白かった。
OZAC
12
1229年にC写本をパリンプセストとして再利用してしまっていたことに驚きを禁じ得なかった。当時アルキメデスの著作は難解すぎて一部の数学者たちにしか知られていなかったというが、それにしてもあまりにも杜撰な扱いに戸惑ってしまう。だが著者によるとどうやらパリンプセストとなったことが、逆にC写本が現在まで生き残ることにつながったのではないかということらしい。確かにA、B写本がともに消失してしまっている事実がそれを証明しているかもしれない。本書を読んでコンスタンティノープルという都市にも非常に興味がわいた。 2019/04/11
のざきち
9
偶々別のレビューで「歴史ミステリーの様なドキュメンタリー」と本書の存在を知りました。1998年にクリスティーズの競売で出品された祈禱書。1229年に書写された際に使われたこの書の羊皮紙の下に、実はアルキメデスの写本が隠れていた!ボロボロになりカビだらけのこの写本を買い取った匿名のIT長者の協力の下、現代のテクノロジーと古典文献学を武器に写本の解読プロジェクトが開始される。アルキメデスが人類史上優れた科学者の一人である事が分かりましたが、本書中の数学の一部が⁇…やはり勉強し直さないと、数学。2020/03/07
田蛙澄
4
不要になった羊皮紙の写本をばらしてナイフで文字を削り軽石でこすることで上書きできるように再利用するという技術があったことは知っていたがパリンプセストと呼ぶことは初めて知った。以前近所の図書館で立ち読みして気になってはいたのだが、中世写本の専門家である学芸員とギリシア数学の専門家のタッグが交互にアルキメデスのパリンプセストについて語り、彼が実無限や組み合わせ論、重心の発見など、いままで浮力の原理でしか印象がなかったアルキメデスがはるかに科学史上重要だったことが分かって面白かった。2016/09/17
Koki Miyachi
4
アルキメデスは、紀元前三世紀のシシリー島のシラクサで生まれた天才的な数学者。当時は印刷技術もなく、紙もなく、羊皮紙に写本され伝えられた。多くの写本は、政治的宗教的なアクシデントの中で失われ、現代まで残された写本は僅か3冊。その1冊C写本をめぐるノンフィクションだ。1998年、科学・医学書の競売でこのC写本が落札される。解読チームのメンバーの目を通して解読のプロセスが多元的に展開。アルキメデスの数学のエッセンスに触れながら現代の最高の知性と技術による奇跡の解読プロセス。久し振りにワクワクし通しだった一冊だ。2014/07/13