内容説明
門が閉まっていれば入らなかった―大阪小学校内児童殺傷事件の公判で、加害者はこう述べたという。従来、犯罪対策は、犯罪者の人格や劣悪な境遇(家庭・学校・会社など)に犯罪の原因を求め、それを除去しようとすることが中心であった。しかしながら、このような処遇プログラムは結局再犯率を下げることができなった。こうした「原因追及」の呪縛を解き、犯罪の予防に新しい視点を与えるのが、「犯罪機会論」である。本書では、どのような「場所」が犯罪を引き起こすのか、また、物的環境(道路や建物、公園など)設計や、人的環境(団結心や縄張り意識、警戒心)の改善を通して、いかに犯罪者に都合の悪い状況を作りだし、予防につなげることができるのかを、豊富な写真と具体例で紹介する。
目次
第1章 機会なければ犯罪なし―原因論から機会論へ(欧米の犯罪対策はなぜ成功したのか;新しい犯罪学―犯罪をあきらめさせるアイデア)
第2章 犯罪に強い空間デザイン―ハ-ド面の対策(「防犯環境設計」で守りを固める;監視カメラが見守る、監視カメラを見張る)
第3章 犯罪に強いコミュニティデザイン―ソフト面の対策(「割れ窓理論」で絆を強める;被害防止教育の切り札「地域安全マップ」の魅力)
第4章 犯罪から遠ざかるライフデザイン―もう一つの機会論(立ち直りの「機会」をどう与えるか;非行防止教育で「対話」と「参加」を促す)
著者等紹介
小宮信夫[コミヤノブオ]
立正大学文学部社会学科助教授(社会学博士)。中央大学法学部法律学科卒業。ケンブリッジ大学大学院犯罪学研究科修了。法務省、国連アジア極東犯罪防止研修所、法務総合研究所などを経て現職。専攻は犯罪社会学。東京都「治安対策専門家会議」委員、東京都「地域安全マップ専科」総合アドバイザー、東京都「非行防止・犯罪の被害防止教育の内容を考える委員会」座長、広島県「子どもの安全な環境づくりアドバイザー」、青森県「防犯環境設計アドバイザー」、鹿児島県「100人委員会」委員、富山県「新総合計画研究会」委員、文部科学省「防犯教育及び学校の安全管理に関する調査研究協力者」など
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