ファンタジー万華鏡(カレイドスコープ)

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  • サイズ B6判/ページ数 238p/高さ 20cm
  • 商品コード 9784327481483
  • NDC分類 909.3
  • Cコード C1098

出版社内容情報

新しい視点でファンタジーの魅力を語る。

 映画『ハウルの動く城』の原作者として一躍有名になったダイアナ・ウィン・ジョーンズの一連の作品や『ハリー・ポッター』シリーズのような新しいタイプのファンタジーには、今までにはない新たな魅力があります。それはなんであるのかを探ると同時に、従来の作品に違う角度から光をあて、そのさらなる魅力を解き明かします。「ダーズリー一家のハリーいじめはギャグマンガ」「タイム・ファンタジーとしての『指輪物語』」など、独創的なファンタジー論を展開。ファンタジーがさらに楽しくなる発見の書です。
本書では以下の作品を主にとりあげました。
『トニーノの歌う魔法』『魔女と暮らせば』「キャロル・オニールの百番目の夢」(D.W.ジョーンズ)/『ハリー・ポッター』シリーズ(J.K.ローリング)/『魔よけ物語――続・砂の妖精』(イーディス・ネズビット)/『とぶ船』(ヒルダ・ルイス)/『時の旅人』(アリソン・アトリー)/『ジェニーの肖像』(ロバート・ネイサン)/「マリーン」(萩尾望都)/『トムは真夜中の庭で』(フィリパ・ピアス)/『ライトニング』(ディーン・R.クーンツ)/「たった一人」(宮部みゆき)/『ホビットの冒険』『指輪物語』(J.R.R.トールキン)/『リト河出書房新社)などがある。
 訳書は、O.R.メリング『妖精王の月』シリーズ(講談社)、M.ムアコック『エルリック』シリーズ(ハヤカワ文庫)、T.ブルックス『妖魔の住む街』(ハヤカワ文庫)、R・サトクリフ『ベーオウルフ』(原書房)、S.クーパー『影の王』(偕成社)、M.コーレン『トールキン 『指輪物語』を創った男』(原書房)、W.G.ハモンド、C.スカル『トールキンによる『指輪物語』の図像世界』(原書房)、D.プリングル編『図説 ファンタジー百科事典』(監訳、東洋書林)、D.デイ『図説 トールキンの指輪物語世界――神話からファンタジーへ』(原書房)など多数。
 『ファンタジーの魔法空間』が第27回日本児童文学学会賞を受賞。

はじめに
Ⅰ 二つのネオ・ファンタジー
 1 平面性の女王――ダイアナ・ウィン・ジョーンズ
     設定と身体の平面性/フラットな感情と一元的な世界/リアルという体験
 2 身体性の転換――『ハリー・ポッター』
     二次元と三次元の間で/「壊れない」身体と、生身の身体の往還
Ⅱ タイムファンタジーとしての『指輪物語』
 1 タイムファンタジーの流れ
 2 『指輪物語』における生活と物語
     映像化と語り/華々しい映像――物語――と小説の生活感/虚構性とリアル
 3 『指輪物語』の中の時間
     ビルボの「家」と「冒険」/時空を超える装置としての予知と透視/歌枕に
     よる現実と物語の往還――時空のパノラマ
Ⅲ フィギュアの物語――身体と魂
     フィギュア――ミニチュアの喜び/ダウンロードされる魂/人造の身体に
勧請される魂/身体観の変容
Ⅳ 博物学の夢想
 1 ファンタジーは地底をめざす
     地層の発見/博物館とファンタジー/地層と時間の逆転/地下における身体
体験
 2 ドードー鳥の座標
     二重の生物観/博物館というコレクター/死骸への固着
Ⅴ ハイ・ファンタジーの企み
 1 召命と次

内容説明

ハリー・ポッター、指輪物語、そしてダイアナ・ウィン・ジョーンズ。さあ、ネオ・ファンタジーの世界へようこそ!古今東西の作品がさらに面白くなるユニークなファンタジー論。

目次

1 二つのネオ・ファンタジー(平面性の女王―ダイアナ・ウィン・ジョーンズ;身体性の転換―『ハリー・ポッター』)
2 タイム・ファンタジーとしての『指輪物語』(タイム・ファンタジーの流れ;『指輪物語』における生活と物語;『指輪物語』の中の時間)
3 フィギュアの物語―身体と魂
4 博物学の夢想(ファンタジーは地底をめざす;ドードー鳥の座標)
5 ハイ・ファンタジーの企み(召命と次元上昇―『十二国記』というファンタジーの仕掛け;リセット・ファンタジー)

著者等紹介

井辻朱美[イツジアケミ]
歌人・作家・翻訳家。東京大学理学部生物学科をへて、同大学院比較文学比較文化修士課程修了。白百合女子大学文学部教授。専門は英米ファンタジー。『ファンタジーの魔法空間』(岩波書店)により第27回日本児童文学学会賞、『歌う石』(O・R・メリング、訳書、講談社)により第43回サンケイ児童文学賞受賞
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

Mana

5
ファンタジーについての文学論みたいな本。とてもしっかりした本で興味深かった。ダイアナ・W・ジョーンズの作品をけっこうけなしている感じだったけど、私はそこまでひどい作品だとは思わなかった。たしかにアミューズメントパーク的で現実感の感じ取りにくい部分はあるけど登場人物の心理はけっこうリアルだと思う。魔法使いは誰だもとても面白かった。十二国記の世界設定の分析はとても良かった。今まで意識せずに読んでいた部分を明朗に説明してくれた感じ。読んでて凄く納得した。2012/06/16

本とフルート

3
『ファンタジーを読む』に続いて、井辻朱美さんのファンタジー評論の2冊目。十二国記がしっかり取り上げられていたのが良かった。反論もないではないが、だからこそ十二分に読み応えがあった。次々と知らなかった読みたい本が出てくるのが困るが、それも醍醐味の一部だろう。2021/03/31

すがし

3
極めて精緻なファンタジー論。で、ありながらいささか論が主観的でありすぎはしないか? ダイアナ・ウィン・ジョーンズはキャラクターに重みがなく軽いと批判した(ように読める)のに、十二国記をリアルではないからすばらしいと絶賛したり、この人の価値判断の基準がどこにあるのかよく分からない。ただ、自分にとって大変示唆に富む内容であった事もまた事実である。2010/08/02

aoyami

3
比較文学の本。3次元性を重視して書かれた指輪物語から、2次元的死生観を持つ現代ファンタジーへ。地底と時間、最新科学との相性の良さ、ファンタジーが読者にもたらすもの、読者がファンタジーに期待することなど多角的視点から。読んでみたいファンタジー小説が増えた。2010/07/13

くろなつ

2
ファンタジー論。比較文学。緻密に論が組み立てられているのが好評価。だけどちょっと論の展開が主観的かもしれない。それを覗けば多角的な視点で書かれているので興味深い。2010/09/05

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