ヒーローから読み直すアメリカ文学

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  • サイズ B6判/ページ数 265,/高さ 20cm
  • 商品コード 9784326851744
  • NDC分類 930.29
  • Cコード C0098

出版社内容情報

女の言葉でアメリカ文学のヒーローを再定義する画期的な試み。文明による荒野の制覇を歴史的背景として、アメリカ文学は男性中心に展開してきた。女性作家やヒロインからの読みかえを行ってきた著者たちが、敢えて正面からアメリカン・ヒーローの神話に取り組んだのが本書である。
 『白鮫』『グレート・ギャツビー』『ライ麦畑でつかまえて』など19作品から、23人のヒーローが登場。伝統的価値観の体現者からマイノリティまで、男性像の典型と多様性とがともに浮かび上がる。
 『ヒロインから読むアメリカ文学』の姉妹編。




【目次】
序章 「武器は手放せない!」―アメリカン・ヒーローの形成
 1 ウェスタンのヒーロー
 2 フロンティア大西部の自然
 3 ナッティ・バンポー型のヒーロー
 4 「森の悪魔」型のヒーロー
 5 「ソルト川の雄叫び野郎」
 6 ウェスタン・ヒーローは本物の紳士!
 7 文明と荒野の衝撃の果て

Ⅰ 男性神話の呪縛と暴力―ロマンティック・ヒーロー
第1章 男同士のきずなを求めるヒーロー・ナレーター
     ―メルヴィル『白鯨』
 1 男だけの世界
 2 越境するアイデンティティ
 3 親友のきずな
 4 断ち切られるきずな
 5 権威の否定

第2章 男の自我のロマンス―ホーソン『大理石の牧神像』

 1 ロマンスと近代的視線の矛盾
 2 ドナテロの失楽園の意味
 3 近代的結婚の成立
 4 失われた姉妹愛
 5 近代的自我とカップルの形成

第3章 過去に固執する男たち―フィツジェラルド『グレート・ギャツビー』
 1 1920年代のアメリカ
 2 古い価値観への固執
 3 「資産家の息子」への憧れ
 4 男性にとっての脅威
 5 フィツジェラルドの予測する未来

第4章 男根神話の呪縛を受けた男たち―ディッキー『脱出』
 1 現代アメリカの神話
 2 都市と辺境の対立の物語
 3 狩猟による通過儀礼の物語
 4 男根崇拝の物語
 5 呪縛からの解放、そしてさらなる呪縛

Ⅱ 周縁に生きる男の悲哀と欺瞞―アンチ・ヒーロー
第5章 愛を標榜する心やさしきヒーローたち
     ―サリンジャー『ライ麦畑でちかまえて』『フラニーとズーイ』など
 1 愛を掲げるアンチ・ヒーロー
 2 いい女は見つけるのがむずかしい
 3 ジェンダーに分裂するホールデン
 4 聖人は美女に弱い
 5 愛という名の隠れ蓑

第6章 愛に飢えたヒーロー―ライト『アメリカの息子』
 1 ライトとの作品
 2 さまよう視線と不可視の目の恐怖
 3 博愛主義者の冷たい目
 4 愛のまなざしを得て
 5 ライトの予言

第7章 民族の歴史を背負うアイリッシュの男たち
     ―オニール『詩人気質』『日陰者に照る月』『氷屋来る』
 1 オニールとその時代
 2 過去回帰願望の父
 3 母性願望の息子
 4 弱き者たちの生きる道
 5 心の拠り所を求めて

Ⅲ 女が語る男の真実と可能性―ネガティブ・ヒーロー
第8章 ネガティブ・ヒーロー恋愛作法―ウォートン『歓楽の家』
 1 ウォートンと「非行動派」弁護士
 2 「白い奴隷」を売買するニューヨーク上流社会
 3 ディレッタントの奴隷保有願望
 4 「新しい男」の真実
 5 「新しい男」を描くことの限界

第9章 因習に囚われた男たち―スティーブンス『マラエスカ』など
 1 ダイム・ノベルの出現
 2 ダイム・ノベルとなったセンチメンタル・ロマンス
 3 階層社会の男たち
 4 二つの捕虜物語
 5 男たちの世界へ

第10章 女の叫びに耳を澄ます男―ネイラー『リンデン・ヒルズ』
 1 空虚な「黒檀の宝石」
 2 ウィリーの心の師
 3 「心の鏡」を失った人びと
 4 ウィラの心の旅
 5 二つの出会い

第11章 男たちの沈黙が語るもの―キングストン『アメリカの中国人』など
 1 中国系アメリカ人作家の台頭まで
 2 社会の周縁にさまよう男たち
 3 封印される男たちの真実
 4 社会への定着と一世たちの変容
 5 同化への長い道のり

あとがき
索引       

内容説明

伝統的価値観の体現者からマイノリティまで、男性像の典型と多様性とが浮かびあがる。女の言葉でヒーローを再定義する。

目次

「武器は手放せない!」―アメリカン・ヒーローの形成
1 男性神話の呪縛と暴力―ロマンティック・ヒーロー(男同士のきずなを求めるヒーロー・ナレーター―メルヴィル『白鯨』;男の自我のロマンス―ホーソーン『大理石の牧神像』;過去に固執する男たち―フィッツジェラルド『グレート・ギャツビー』;男根神話の呪縛を受けた男たち―ディッキー『脱出』)
2 周縁に生きる男の悲哀と欺瞞―アンチ・ヒーロー(愛を標榜する心やさしきヒーローたち―サリンジャー『ライ麦畑でつかまえて』『フラニーとズーイ』など;愛に飢えたヒーロー―ライト『アメリカの息子』;民族の歴史を背負うアイリッシュの男たち―オニール『詩人気質』『日陰者に照る月』『氷屋来る』)
3 女が語る男の真実と可能性―ネガティブ・ヒーロー(ネガティブ・ヒーローの恋愛作法―ウォートン『歓楽の家』;因習に囚われた男たち―スティーブンス『マラエスカ』など;女の叫びに耳を澄ます男―ネイラー『リンデン・ヒルズ』;男たちの沈黙が語るもの―キングストン『アメリカの中国人』など)

著者等紹介

佐々木みよ子[ササキミヨコ]
イェール大学大学院博士課程修了(Ph.D.)。現在、白百合女子大学教授
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。