出版社内容情報
キリスト教思想には余り知られていないすぐれた遺産、貴重な考え方がある。歴史を遡り聖書を繕いて、よく見える地点へと誘う。
全四章からなる書下し評論。表題は順に「人間は被造物」「やっぱり隣人愛」「彼らは何から救われたのか」「終れない終末論」。これらはキリスト教の教義の四大項目に対応している(創造論、教会論、救済論、終末論)。といって内容は教義の解説ではありえない。素材を自由に選び、ユーモアを交え、楽しく鋭い論評が加えられている。
関連書:『書物としての新約聖書』(小社刊)、『イエスという男』(作品社)
第一章 人間は被造物
第二章 やっぱり隣人愛
第三章 彼らは何から救われたのか
第四章 終れない終末論
後書き
★この本をお薦めします★~紀伊國屋書店梅田本店・北村貴克
こういう本を読む時、必ず9.11以降に書かれた本だと思って読むことにしています。答えは書いてないかもしれない。答えは自分で見つけなければいけません。読書とはそういうものだと思います。
内容説明
キリスト教思想には余り知られていないすぐれた遺産、貴重な考え方がある。歴史を遡り聖書を繙いて、よく見える地点へと誘う。
目次
第1章 人間は被造物
第2章 やっぱり隣人愛
第3章 彼らは何から救われたのか
第4章 終れない終末論
著者等紹介
田川建三[タガワケンゾウ]
1935年東京に生まれる。専攻は新約聖書学
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
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優希
76
ラディカルなキリスト教思想が伺えます。創造論、教会論、救済論、終末論というキリスト教の核とも言える4つの思想を大胆に批判しているのが印象的でした。贖罪信仰と反倫理主義が著者の持つ信仰論であり、キリスト教思想なのではないかと思います。聖書全てを正としない立場にあるからこそ論じられることも多いのかもしれません。だからなのか読み応えがありました。このような思想も1つのキリスト教論としてあることを知ることができたのは有益です。2017/07/09
west
5
キリスト教によれば人間は神に造られた被造物である。しかしたとえキリスト教の神など存在しないとしても、人間が被造物である事実に変わりはない。ゆえにわれわれは自分や他者や自然を自由に支配できるわけではない……このような「神など存在しなくとも」という立場から創造信仰、隣人愛、救済論、終末論といったキリスト教のドグマがもつ歴史的意義と効用を説いている。聖書テキストの読解も圧倒的に詳細で信頼できる。2022/10/23
giant_nobita
5
第一章七について。もちろん新約聖書を書いた人が西洋近代の大規模かつ破壊的な自然征服を予期していたわけではないけれども、聖典という性格上そこに書かれてあることが後世においても参照されるのは当然であり、近代の資本主義や帝国主義のイデオロギーのせいにしてそれまで連綿と読まれ続けてきた聖書の責任を認めようとしないのは虫がよすぎるのではないか。聖書が全面的に悪いわけではないにしろ、著者の言い逃れは説得力に乏しくいささか見苦しく感じられた。いいことは聖書のおかげ、悪いことはひとのせいという態度は誠実さに欠けている。2014/11/24
カリスマ予備校生
4
前半では、キリスト教の成し遂げてきた優れたこと、後半では、救済、黙示録についての解説といった構成をとっている。全面的にキリスト教は特別な宗教ではない、キリスト教は善悪の二面性がある、キリスト教の中にある党派精神を批判するという考えの元書かれていた。 個人的には新約聖書の内容を原文から直接りかいしようとしている後半が新鮮で面白い。キリスト教にはネガティブないめーじをもつ日本人は少なくないと思うが、根幹を見てみるとよい点があるのだなぁと思わせてくれる本である。2014/08/21
belier
3
学識あるキリスト教学者の辛口なエッセイ。独特のキリスト教観をときには時事放談を交え、ときには神学者への辛辣な批評を加えながら語ってくれている。意外と共感する部分は多かった。今年はユリアヌス関連や古代史をそこそこ読んで知識を得ていたが、聖書学者の豊富な知見で内容を裏付けてくれるものもあった。著者と相性があう部分だ。一方で、福音書しか読んでいないため、なぜそういう結論になるかわからないことも多く、著者の断言にもやもやした。新約聖書の理解は全然だということを痛感したのだった。2023/12/20