内容説明
名アンソロジスト渋沢龍彦が選んだ十篇の幻想文学の代表作。幻想文学の本場ドイツから『砂男』『ウンディーネ』他。幽霊好きのイギリスから『フランケンシュタイン』他。フランスからはリラダンとアポリネールの作品。ロシアから『鼻』他。アメリカから『黒猫』を収録する。他に、古代中世の美術からシュルレアリスムへと続く系譜を紹介した「幻想美術の流れ」を付す。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
Mishima
15
ウンデイーネ(フーケ)フランケンシュタイン(シェリー)砂男(ホフマン)スペードの女王(プーシキン)鼻(ゴーゴリ)黒猫(ポー)ジキル博士とハイド氏(ステイーヴンソン)ウイルジニーとポール(リラダン)オノレ・シュブラックの失踪(アポリネール)変身(カフカ)10作収録。編者、澁澤氏が前書きにて幻想文学を紹介、後書きにて幻想美術を紹介。作品ごとに訳者による作品、作者についての解説あり。「砂男」(ドイツ)「スペードの女王」(ロシア)が好みに合致。聞き覚えのある物語も、こうして元の話を読むとあらたな感慨があるものだ。2015/03/25
袖崎いたる
11
合理化が世界を支配する、これは世界を日常化するとも言い換えが利くだろう。幻想文学はそんななかで、普段は見過ごす景観の一部や優秀な脳によって自動化されてる細部に異変が起こる〝かもしれなさ〟にビビる人間の情けなさの健在を突く。本作に収録されてる作品はどれも有名過ぎて逆に読まず過ごしてきた作品ばかり。その意味で幻想文学再入門的な一冊となっている。いろいろ収録されてるが…ぼくの琴線を痛切に弾いたのがカフカの『変身』だったのには苦笑。そうなることを信じていないが、そうなることが怖いことはわかる。――これが幻想文学?2016/05/14
べりょうすか
5
読んでみたいけど難しそう、と敬遠してた作品がけっこうあった。これが読んでみたら意外と面白く、作品の後の解説も分かりやすくて良かった。なかでも、ウンディーネやスペードの女王、黒猫、が良かった。 2014/05/28
Mingus
2
どうやら過去に一度読んでいた?らしいのだが、本棚に積読されていたと思い手に取った本作。澁澤氏がカテゴライズした、"幻想文学"なるものを世界の文学から厳選しただけあって、サクッと読めるのに後味は濃厚。面白い。カフカの変身が大分要約されていて、他の作品もそうなのかなと思ったのだが、かなり体系的に効率良く面白い幻想文学を掻い摘むことが出来る。一番ありがたいなと思ったのは、作品ごとに解説だけでなく作者の生涯も丁寧に掲載されていること。個人的に好きだったのは、フーケのウンディーネ、プーシキンのスペードの女王。2022/02/15
れどれ
2
幻想名作集とは銘打たれているけれど怪奇譚のほうがしっくりくる。有名高名な作品が揃い踏み。御伽噺の伝奇ぶりを人工性で統御、圧倒しようという力強い時代の気高さを実感する。2017/06/26