内容説明
ヨーロッパの名は美女エウロペーに由来する。ウエロペーにはぐくまれたヨーロッパは、また著者にとっても精神の母胎であった。昭和45年、その“眷恋の地”へ著者は初めて旅立った。かねてから心ひかれていた城、庭園、都市、美術館などを求めて、フランス、スペイン、イタリアと足をのばした後ヶ月の滞在は、視る喜び、味わう楽しみにみちた旅であった。当時の印象を中心に編まれた紀行集。
目次
バロック抄―ボマルツォ紀行
マジョーレ湖の姉妹
狂王の城
エル・エスコリアル訪問
優雅なスペイン、優雅なゴヤ
イスパハンの昼と夜―アストロラーブについて
シンメトリーの画家―谷川晃一のために
日時計について
巨木のイメージ
パリ食物誌
シェイクスピアと魔術
自分の死を自分の手に〔ほか〕
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
izumi
25
いつかボマルツォやイゾラ・ベッラに行ってみたいと思い、手に取りました。前半の紀行文は渋澤さんと一緒に旅をしているような感覚になりました。私も多田智満子さんと同じく『イスパハンの昼と夜 アストラーブについて』が一番好きです。 「イスパハン」というエキゾチックな言葉の響きにうっとりします(ピエールエルメのケーキが思い浮かぶせいもありますが)。2015/11/02
steamboat
10
ヨーロッパ紀行文集と少しのエッセイ。出てくる場所や物を全然知らなかったので、都度スマホで検索しながら読んだ。表紙にもなっている怪物庭園やエルエスコリアルなど、行きたい場所もたくさんできたし知識欲を刺激された。後半のエッセイでは、処女と娼婦の共通性を論理的に説明した「わたしの処女崇拝」が面白かった(タイトルがひどい…笑)。2016/06/13
Masakiya
5
前半は著者のヨーロッパ旅行の紀行。興味の対象がやや特殊とはいえ、月並みと言えば月並みな感想が並ぶ。文献を駆使して博覧強記ぶりを発揮する後半の文章のほうが魅力的。錬金術の祖とされるヘルメス・トリスメギストスという人物がいたそうだが、これが『恋の呪文はスキトキメキトキス』のルーツではなかろうか、と私は睨んだ。2015/11/04
ホークス
3
著者の本を読んだ後、理解出来ていない不安にいつも駆られるが、何だか又引き寄せられてしまう。この本では「幻想美術とは何か」が印象に残った。悪魔が神の陰画である様に、幻想美術はリアリズムの陰画であり、現実に寄生しかつ「反する」存在だ。それ故決して曖昧模糊とはしておらず、意志的に何かを語ろうとする。その力で、現実を浸食し腐敗させるモメントなのだ。…と言う論旨と思うがいまいち不安。ただこの人は、嗜好、違和感、インスピレーションをおろそかにしない。小手先の現実論に進む前に、そちらを徹底的に思考せよ、と理解した。2015/01/02
OKKO (o▽n)v 終活中
3
またまたイタリア行きに向け、拾い読みに留まっていた本書を通読す。庭園、洞窟、噴水、マニエリスム都市など私にとっておいしすぎるテーマ満載。◆澁澤氏が書斎を出て現場に繰り出したシリーズの一冊。主にマニエリスム芸術に関するエッセー多数+アルファ。◆何年考えても氏のバロックとマニエリスムの切り分けには「???」◆「ボマルツォ」と「フランスのサロン」が一冊に同居するのはどうなんだ? 昭和48年の最初の出版時のラインナップを知らないのでわからんが、マニエリスムマニアでサロンに興味のない私には違和感大ナリ。変なの。2013/06/01