内容説明
鴎外は冷たいか?その“不遇への共感”に注目しつつ、新たな鴎外文学の受容をめざす。『石川啄木論』『漱石―ある佐幕派子女の物語』と、ゆるぎのない成果を示してきた著者平岡敏夫がここに初めて年来の鴎外論集を問う。
目次
1 不遇への共感(不遇への共感―新たな鴎外受容のために;鴎外と青年―石川啄木・羽鳥千尋 ほか)
2 「舞姫」成立前後(「舞姫」成立前後;「舞姫」と『燕山外史』―才子佳人の奇遇を中心として ほか)
3 小説と史伝(「半日」の方法―日露戦後文学における家・家庭;「雁」―青年像の周辺 ほか)
4 鴎外における官僚の問題(鴎外における官僚の問題;鴎外と陸軍軍医総監その他 ほか)
5 鴎外と住まい―湯殿と書斎(嫁姑“攻防”の湯殿―「半日」の家庭;銭湯と内風呂の差―「半日」「行人」「家」 ほか)
4 鴎外研究(小堀桂一郎『西学東漸の門 森鴎外研究』;三好行雄『鴎外と漱石 明治のエートス』 ほか)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
Midori Nozawa
7
とにかく最後の頁までたどりつきました。軍医と作家の両方をこなしたバイタリティーに驚きます。睡眠時間は4時間だったと書かれた部分がありました。嫁姑の確執は永遠の課題のようです。鷗外もそうでした。最初の妻と1年程で離婚、40代になって再婚しています。高瀬舟の安楽死のテーマは鷗外の実弟の闘病経験も影響しているとか。舞姫の悲恋もそうですが、体験をどう文学として高めていくかが文学者に課せられているのでしょう。本著の中で、漢字カタカナ混じり文(当時の口語文)など慣れないため困難でした。日本語の変遷も学べました。2018/03/10