内容説明
「技術としてのやさしさ」を探る七人との対話。
目次
1部 向かいあって考える 対談(ケアと異界(田口ランディ)
「当事者の時代」に専門家はどこに立つのか(向谷地生良)
情動・ことば・関係性(滝川一廣)
病いを得るということ(瀬戸内寂聴))
2部 若手研究者が考える インタビュー+論文(「私」はどこにいるのか(西川勝)
なんてわかりやすい人たち(出口泰靖)
治らないところから始める(天田城介))
3部 認知症を生きるということ 公開講座より
4部 「ぼけ」を読む 認知症高齢者をかかえる家族への手紙
著者等紹介
小澤勲[オザワイサオ]
1938年神奈川県生まれ。京都大学医学部卒業。精神科医。京都府立洛南病院勤務。同病院副院長、介護老人保健施設「桃源の郷」施設長を経て、種智院大学教授を務めた後、同大学客員教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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丸坊主
6
今まで勝手に『高齢者支援向けの本』というラベルを貼って目を通さずにいました。自分の偏見を後悔しています。『やさしくない自分が、やさしさが求められる現場で、どうすればやさしくできるか』『やさしさに至る知が求められている』という前書きから最後のページまで、心を掴まれっぱなしでした。私は不器用で下手な支援員なので、対人支援のセンスや技術を少しでも言語化したいと考えています。この本には良質なヒントや知見がありすぎて、アンダーラインや書き込みだらけになりました。対人支援に携わる方には強くお勧めします。 2015/05/16
ユウキ
3
ケア(というか、ほぼ全て)は教育につながると感じる。ここでは認知症が主に取り上げられるが、べてるの家の向谷地さんも対談に出てくるし、とっても人間の本質的なことが語られていた。まえがきが素敵。以下引用。 確かに「受容」という言葉は、ケアの全てを言い表している。しかし、全てを言い表す言葉は、何も言っていないのと同じである。「受容せよ」と言われて、解決するくらいなら、とっくの昔に解決していたに違いない。 やさしくない自分が、やさしさを求められる現場で、どうすればやさしくできるか。それが私の課題だった。 続2024/03/19
okatake
3
寂聴氏をはじめとした七人との対話を中心にして、小澤氏の(認知症)ケア論が展開されています。 認知症のいわゆるBPSDについて「そもそも中核症状による不自由」によるもので、「すでに保持することが困難になった自己同一性への執拗なこだわり」「自己同一性への脅迫的なこだわりが、かえって自己同一性の保持を危うくし、大きな揺れを招く」そして、「異常な状況に異常な反応をするのは正常である」というフランクルの言葉を引用しながら、周辺症状をコーピングとして捉えています。 現実のギャップをケアが補い支えて行くことが大切です。2016/11/21
amanon
3
実際に高齢者介護に携わる者として、示唆に富むところ、身につまされるところが多々あった。正直「理想的に過ぎるのではないか?」と思えるところも散見されたが、それでも著者を始め、本書に登場する対談相手の多くが、地に足のついた立場から介護の困難さ、しんどさ、それでもそこにある豊饒な世界について真摯に語っている姿に好感を覚えた。個人的にはⅡ部に登場する僕よりも若い人達による知的で瑞々しい言葉遣いとケアに対する熱い思いに少なからず心打たれた。それから、本書で度々言及される「物語としてのケア」には一考の価値あり。2016/04/04
Red-sky
3
図書館で借りてみて自分に合いそうだったら購入を検討しようと思っていたが、冒頭で引き込まれ、早々に手元に置いておきたい一冊だと思いました。対談になっていることで色々な立場の人がそれぞれの視点、フィールドから情報を発信していたのでとても参考になりました。ぜひ購入して、付箋とアンダーラインでいっぱいにしたい本だった。2014/06/17