出版社内容情報
大本営情報参謀から戦後に自衛隊情報室長を務めたプロが、体験を通して情報に疎い日本陸軍及び日本の組織の構造的欠陥を告発する
内容説明
「太平洋各地での玉砕と敗戦の悲劇は、日本軍が事前の情報収集・解析を軽視したところに起因している」―太平洋戦中は大本営情報参謀として米軍の作戦を次々と予測的中させて名を馳せ、戦後は自衛隊統幕情報室長を務めたプロが、その稀有な体験を回顧し、情報に疎い日本の組織の“構造的欠陥”を剔抉する。
目次
陸大の情報教育
大本営情報部時代
山下方面軍の情報参謀に
再び大本営情報部へ
戦後の自衛隊と情報
情報こそ最高の“戦力”
1 ~ 1件/全1件
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
yoshida
96
対米戦争の敗戦。それは情報の軽視が起因する。更には、情報を大本営が正しく活用すれば犠牲もより少なく済んだだろう。大本営情報参謀だった著者の見解は説得力がある。太平洋で隣接する大国アメリカ研究の軽視。主戦場である島嶼戦の戦略もされない。WW1以降20年に渡り対日戦争を計画準備したアメリカとの差は歴然としていた。最大の課題は根底にある日本人の意識が変わっていないことだろう。迎合する事無かれ主義。あまりに疎漏な情報への意識。国家であれ企業であれ、組織で同様の状況を見る。国家の場合は亡国に繋がる。読むべき作品。2021/07/31
Miyoshi Hirotaka
80
兎に速い足があっても、長い耳で素早く敵を察知しなかったら走る前にやられる。国家にとって耳は情報機関。米国は20年以上前から太平洋での戦いを予想し、あらゆる用意を整えていた。一方、わが国は三流の軍隊と楽に戦ううちに作戦第一、情報軽視、企業でいうところの作り手の論理や計画を優先させる体質に陥った。テニアンを飛行する正体不明機は6月頃から察知されていたが、それが「新しい実験」と結びついた時には広島市民10万人の命は失われていた。わが国が国際社会の中で確乎として生きてゆくためには兎の耳、即ち情報力を高めるべきだ。2015/09/08
ehirano1
79
「作戦当事者が誤るのは、知識は優れているが、判断に感情や期待が入るからであった(p166)」、「たとえ同盟国と称していても情報だけは別である(p289)」、こんなこと”魔王”結城中佐(ジョーカー・ゲーム参照)にすれば呼吸をするくらい当たり前のことなんだろうなぁ、と勝手に妄想。2016/02/17
ehirano1
68
興味深い本なので短期間に3度も読んでしまいました。「米軍が見た日本軍五つの敗因(p327~328)」は日本人以上に恐ろしいくらい的を得ていて驚愕。これだけの分析ができるということは、やはり米国は満を持して我が国を罠へ誘導しそして見事に罠にかけたとしか思えませんでした。もちろん我が国はその罠の種類も場所も知ってはいたんですけどね・・・・・。2016/02/17
ehirano1
54
B-29のコールサインと原爆投下のコールサインの箇所(p247~260)、とてもノンフィクションとは思えない程の生々しさ。フィクションだったらよかったのに・・・・・。2016/02/17