内容説明
「ローレライ」など抒情詩が「歌の翼」に乗ったことで世界的に知られるドイツのユダヤ系詩人ハイネは、ナショナリズムの一九世紀ヨーロッパを生き、ユダヤというスティグマ(烙印)と格闘しつづけた。そのハイネの全営為と全表現は、冷戦崩壊で噴き出してきたエスニック・グループ(民族集団)間の紛争激化に悩む現代世界にとって、大いに示唆を与えてくれるものと言える。そこで、エスニシティの視点から、ハイネにおけるユダヤ問題を剔抉し、新しいハイネ像を提示する。
目次
序章 現在の世界情勢とハイネ
第1章 ハイネ・ルネッサンス
第2章 ハイネの生い立ちとさまざまな明察・名言
第3章 神々の民主主義―《ユートピア綱領》とスティグマからの逃走
第4章 全民族の国際会議―平和の使命とエスニシティへの飽くなく興味
第5章 アイデンティティの錯乱―フェーブス・アポロとラビ・ファイビッシュ