内容説明
八八の寺院を巡るあり方を決定づけた僧侶の案内記、貧困・病気・差別に苦しめられた巡礼者たちの記録、新聞記者による遍路道中記、バスや鉄道の登場がもたらした遍路道の変貌―。本書は、近世以降の史料を掘り起こし、伝説と史実がないまぜになった四国遍路の実態を明らかにする。千数百キロの行程を歩く巡礼者と、彼らと相対し、お接待文化を育んだ地域住民。歩くだけでは見えてこない歴史の真実を浮かび上がらせる。
目次
序章 巡礼とは
第1章 起源を探る
第2章 江戸時代の四国遍路
第3章 近代の巡礼者たち
第4章 貧困、差別、行き倒れ
第5章 近代化への道
終章 レジャー化する四国遍路
著者等紹介
森正人[モリマサト]
1975年(昭和50)香川県生まれ。2003年関西学院大学大学院文学研究科博士課程修了、関西学院大学博士(地理学)。三重大学助教授を経て、07年より同大学准教授。専門は文化地理学(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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ニコン
23
新聞記事や雑誌の記事までも集め、四国遍路の歴史などがよく解ります。明治時代には、新聞の連載で二人の記者がそれぞれ逆回りをしてどこで会うかの競争もあったなど興味深い話も。読みやすい本です。2015/03/08
yamahiko
21
ずっと抱きつづけていた四国巡礼に対する過剰な幻想を打ち砕いてくれたました。そのうえで、いつかは自分なりに歩いてみたいと思わせてくれた一冊でした。2018/08/20
ようはん
16
四国遍路も今だと一種のレジャー化はしてはいるものの、かつてはハンセン病の患者が巡礼していた事や行き倒れの巡礼者等を巡る地元のゴタゴタの下りは闇が深い。2023/09/17
遊々亭おさる
14
ハンセン病を患い、棄民となった親子が白装束に身を包み荒涼たる道を肩を寄せあいながら歩く…。松本清張『砂の器』の巡礼者のイメージと宗派やルールを問わない緩やかな巡礼やギブアンドテイクの関係のお接待など日本的な宗教感が詰まっているような四国遍路の裏と表、そしてその変容を纏めた一冊。祈り・観光・国家による政治利用…。時代により万華鏡のように様々な顔を見せる四国遍路。『砂の器』のあの男は何を思い、何を祈りながら帰るあてのない旅を続けていたのだろうか。世界遺産を目指す四国遍路は開創1200年を迎えたと言われる。2015/10/17
rigmarole
11
印象度B+。歴史的な基礎知識を一通り与えてくれる入門書として良書だと思います。遍路成立の過程と実態が豊富な史料と研究資料で手に取るように分かり、かつ面白い。種々雑多な人々が様々なやり方の遍路をしてきた中で、私の遍路観は、その宗教性や人格形成上の意義を重んじるという点で、昭和初期に発足した遍路同行会のそれに近いことが分かりました(ただ、私は修行と捉えていないところが異なる)。それ故の装束であり、歩きだと理解しています。それだけに、時勢のためはいえ遍路同行会が軍国主義に迎合し加担したというのは残念です。2018/08/19