中公新書<br> 吉田松陰―変転する人物像

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中公新書
吉田松陰―変転する人物像

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  • サイズ 新書判/ページ数 195p/高さ 18cm
  • 商品コード 9784121016218
  • NDC分類 289.1
  • Cコード C1221

内容説明

長州藩の兵学師範をつとめ、松下村塾を主宰して維新の俊傑たちを育てた吉田松陰は、安政の大獄を断行する幕府から政道批判を咎められ死罪となった。その思想的影響は没後も衰えることはなく、三十年の短い生涯にかかわらず、公刊された評伝は膨大な数にのぼる。「革命家」「憂国忠君の士」「理想の教育者」など、時代の状況によって描かれ方が目まぐるしく変化したのはなぜか。維新に先駆けた思想家の人物像を再構築する試み。

目次

第1章 「革命家」松陰像の浮き沈み―明治期の松陰像
第2章 「国体」と「民主主義」のはざまで―大正期の松陰像
第3章 教育者松陰像から「松陰主義」へ―昭和期の松陰像(一)敗戦まで
第4章 復権、そして多彩なアプローチ―昭和期の松陰像(二)敗戦以後
第5章 人間・吉田松陰

著者等紹介

田中彰[タナカアキラ]
1928年(昭和3年)、山口県に生まれる。1953年、東京教育大学文学部史学科卒業。1959年、同大学院博士課程修了。1964年、学位取得。北海道大学名誉教授。現在、札幌学院大学教授。専攻、日本近代史(明治維新史)
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感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

skunk_c

50
巻末の松蔭に対する最も初期の短い評伝と著者が以前認めた短い評伝との対比の他は、主に時代とともに松蔭がどのように描かれてきたかを記述したもの。松蔭という人物が如何にその時代に「利用」されて像が「作られた」か分かる。特に教科書の罪は重く、また戦後の「革命家」像も牽強付会なものを感じる。終章の松蔭の人間性に対する著者の論考と対比すると、やはり実像は再構築されなければならないと思った。本書は20年前の著で、その後そういう評伝があることを期待したい。「何で松蔭は活動期間に比べ評価が高いのか」との疑問の一端が晴れた。2021/05/15

色々甚平

9
吉田松陰自身ではなく、後の人たちがどう吉田松陰を利用してきたかという本。弟子たちが精神面を書き表すことはできないといい残さなかったからなのか、明治末期から始まり、太平洋戦争周辺を機に教育の目指すべき姿として御輿にされてしまう(特に山口県は小松蔭育成に力を入れていた模様)。このときの印象が強く今でもそのように見られがちなのかもしれない。他の人の視点で面白かったのは、国体主義から社会主義者になった人は松蔭をレーニンと同じ革命家と言い、更に後の人は、ロベスピエールとも言われているのは、なかなか面白い視点だった。2019/04/10

スズツキ

5
来年の大河ドラマが吉田松陰ということでその予行演習。見る予定はないんですけどね。1冊目としては失敗したかもしれない。内容は松陰像というものがその時世でどういう評価をされてきたのか、そしてどういう風に変化してきたかについて。著者は愛国者としての松陰が戦時教育で利用され、結果現代の所謂歴史修正主義につながったとみている。2014/11/01

蘭奢待

3
吉田松陰について語るのではなく、吉田松陰がどう語られてきたかを分析する。右派から神格化されたような存在感が強いが、それは戦前、戦中に、大量発行され、また修身の教科書化された影響による。幕末、明治、戦前、戦中、戦後に分け、吉田松陰像の変遷を分析、考察するなかなか興味深い内容。2017/05/06

鬼山とんぼ

3
時代、論者により人物像や評価が微妙にぶれ、評伝が書かれたのも死後ずっと経ってからという、知名度の割りに謎の多い吉田松陰。その評価の変遷を考証的に調べたルポみたいな本と感じた。個人的には松陰自身はあまりに直情的で、理論家、実践家としては高く評価できないものの、素直な人間的魅力が多くの若者を惹きつけ、明治維新の陰の原動力になったのだろうと思っていた。そういう見方がそれほど狂っていないことが納得できた。2016/01/24

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