内容説明
ペレストロイカは経済問題とともに民族問題の爆発を惹き起こした。十六世紀から膨張を重ね、社会主義政権に受け継がれたソビエト・ロシアはユーラシア大陸の巨大な版図に数多くの民族と宗教をもつが、いまそのヨーロッパ的世界とアジア的世界に亀裂が生じているのである。本書は進行しつつある現在時と歴史的時間をクロスさせ、ロシア史とイスラム史のフロンティアに存在する隠れた構造を剔抉する、歴史学の野心的試みである。
目次
序章 輪郭―白いハーン
第1章 接触―スラブ=トルコ政治経済圏
第2章 征服―民族国家から多民族国家へ
第3章 正当化―トルストイとカフカースの英雄
第4章 支配―新井白石と西徳二郎の見た中央アジア
第5章 軋轢(あつれき)―ムスリマ・シンドローム
第6章 記憶回復―スルタンガリエフの復権
第7章 自己主張―フラトリサイド(兄弟殺し)
終章 代償―ゴルバチョフと新ユーラシア国家