内容説明
生きているから怖いのか。江戸の闇に蹲る男。隙間から覗く眼。待望の書き下ろし“京極怪談”。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
優希
85
単行本で再読です。不気味ながらも切なさが漂っていました。ただ覗くだけで何もしない小平次。だからこそ人々の様々な感情を見てしまう。目線だけで描かれる物語から人を思う気持ち、掻き乱される心、惑わせる存在としてのあり方が伝わりますね。覗くだけで全てが完結してしまうところが流石だなと。最後、掛け軸を引かれる場面で、それまで語りのみだった主人公が動くのが印象的です。2017/07/22
勇波
56
ずっと積読にしていた本書。覗かれるがごとく気になっていたんですがついに読了。いやーこれは面白かった。小平次に魅入られ、お塚を想い、多九郎・運平に掻き乱され、歌仙が惑うという物語です。冒頭の目録を見るだけでこの物語で何がやりたかったのか一目瞭然。お見事。最後のお塚が掛け軸を引き裂いた場面でどこからか『御行奉為』と言う又一の声が聞こえてきたのはアタクシだけではないはず。。そしてこの物語を彩った「宝香お塚」があのシリーズの一柳朱美さんにかぶってしょうがない★2016/06/19
優希
42
再読です。静かで不気味な空気の中に切なさと悲しみを感じました。怖さもありますが、小平次に共感のような感情を持ってしまいます。救いがないようなのに救われる曖昧さが美しさとして際立っていると思いました。2023/12/29
林 一歩
22
粘着質な名作。氏の作品中、最も粘度が高いと思う。個人的な感覚だけど。2014/02/08
星落秋風五丈原
19
2003年山本周五郎賞受賞。幽霊芝居が上手かったと評判だった江戸の役者・小平次とはどのような人物だったのか。怪死したという小平次の噂をしていると、小平次が出てくる。江戸の闇に蹲る男、隙間から覗く眼。書き下ろし「京極怪談」。2004/11/19