出版社内容情報
読める、わかる――21世紀の小林秀雄。
かなしさは疾走する。涙は追いつけない――亡き母に捧げる音楽論「モオツァルト」。そして恩師・辰野隆、美の畏友・青山二郎との「鼎談」、坂口安吾との対談等、昭和21年~23年、44歳~46歳の15篇。
内容説明
モーツァルトのかなしさは疾走する。小林秀雄のかなしさも疾走する。世紀を超えて無垢な魂の協奏曲―。涙は、追いつけない…。1946~48年の作品を収載。
目次
昭和二十一年(座談/コメディ・リテレール 小林秀雄を囲んで(荒正人・小田切秀雄・佐々木基一・埴谷雄高・平野謙・本多秋五・小林秀雄)
ドストエフスキイのこと
モオツァルト)
昭和二十二年(対談/近代の毒(横光利一・小林秀雄)
ランボオ 3
嵯峨沢にて ほか)
昭和二十三年(横光さんのこと;菊池さんの思い出;鉄斎 1 ほか)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ダイキ
5
「昔の人は原文といふものを非常に大事にした。古典といつてね。批評精神が発達しなかつた証拠といふ風にばかり考へたがるが、そこにはやはり深い智慧があるのだ。原文尊重といふ智慧だ。古典を絶対に傷つけたくなくなるんだ。勝手に解釈するのが嫌になるんだ。古典を愛してそのまま読む、幾度も読むうちに原文の美がいよいよ深まつて来る。さういふ批評の方法もあるのだ。現代で一番軽蔑されてゐる批評方法だ。」〈コメディ・リテレール〉2018/01/28
masanari
2
「僕は反省しない」と啖呵切った箇所だけよく取り上げられる「コメディリテレール」収録。そこだけ聞くと馬鹿な質問に呆れた小林の発言のように読めるが、全編読んでみると聞き手の小林への理解の深さがわかる。当時の文壇では批判するにしろ、肯定するにしろここまで小林を読んでいたのかと恥ずかしくなる。2021/12/02
MatsumotoShuji
0
031221
0
再読。二つの対談がちょうど円環をなすように本書は構成されている。一つは小林秀と蔵原惟人を止揚することを目的とした「近代文学」グループの座談会に小林を招待した「コメディ・リテレール」。もう一つは小林批判の「教祖の文学」を発表していた坂口安吾との対談。批評の方では、戦後、再びランボーについて自閉的な「球体」の破壊と「物」の手触りへの自覚と語り直した「ランボオⅢ」など読むべきものが多い。2023/08/19