出版社内容情報
読める、わかる――21世紀の小林秀雄。
波瀾万丈、乱脈無比――広大な、深刻な実生活を生きた作家の実生活を、ダイナミックに追った独創の評伝「ドストエフスキイの生活」。他に「満州の印象」「読書について」等、昭和14年37歳の16篇。
内容説明
広大な、深刻な実生活を生き、実生活について、一言も語らなかった作家―、ドストエフスキー。その実生活の評伝、迫真の彫像。全文新字体、新かなづかい、そして脚注。
目次
満洲の印象
小川正子「小島の春」
文芸月評17―「仮装人物」について其他
「文学界」編輯後記
正宗白鳥「文壇的自叙伝」
エーヴ・キューリー「キューリー夫人伝」
島木健作君
映画批評について
クリスティ「奉天三十年」
現代の美辞麗句
疑惑
読書について
現代女性
文芸月評18
ドストエフスキイの生活
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
くみ
18
表題作「ドストエフスキーの生活」が読みたいなと思って手に取ったのですが、それはもちろん、他の評論もエッセイもすごく刺激的でした。特に「読書」に対する並々ならぬ思いは深く熱い。濫読は肯定派。それも反論の余地を感じさせない切れ切れの論理性と、にくめない口の悪さとのミックスで構成されていて、読むこちらを飽きさせない。読書友人のマダムが「私らの頃はみんな小林秀雄に夢中だった」と仰ってたが、なんかちょっとわかるかも。。論理もすごいけどガキ大将の側面がちらり。2018/08/30
1
再読。「ドストエフスキイの生活」の「序」は奇妙な印象を受ける。まず、小林は、対象となる作家の伝記的方法論をここで長々と開陳しているわけだが、ヘイドン・ホワイトが述べるように、歴史は歴史家の「物語化」によって順序づけられ、整合性が与えられる。「序」の「自然」と「歴史」の弁証法的なメカニズムの観察は、今まさに書かれようとしているドストエフスキーの伝記を再帰的/自己言及的に語っていると言える。問題は、ドストエフスキーがいたロシアの社会と、これが書かれていた日本の社会がどれほ隔っていると言えるのかということだ。2023/08/15
MatsumotoShuji
0
030818
ts1546
0
「読書について」は何度も読む。「人間が現れるまで待っていたら、その人間は諸君に言うであろう。君は君自身でい給え、と」
chiro
0
伝記作家として小林秀雄が記したドストエフスキイの生涯。「地下室の手記」の主人公を彷彿とさせる日々を過ごしたドストエフスキイに潜む性質が「罪と罰」「白痴」「悪霊」そして「カラマーゾフの兄弟」を生んだのだと知り得た。晩年は確固たる地位を築いて日々を過ごせた故にか伝記に割かれた紙幅は少なかった。2020/05/02