感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
keint
5
源実朝の和歌がまとめてある。音のリズムにこだわった表現など彼が京から離れた鎌倉で培った感性を如何となく発揮できている歌が多かった。 解説の実朝像は通説を脱せていないので、実朝が北条氏の傀儡ではなく自分の意思を持って政務に取り組んでいた姿などが考慮されていないと感じた。2019/11/22
内藤銀ねず
5
金槐和歌集には2種類の系統本があって、岩波文庫版は『柳営亜槐本』という、足利義政が編纂したと言われてる系統です。こちらは昭和になって発見された『定家所伝本』の系統で、岩波版よりも歌の並びが穏やかです。 さらには現在見つかっている実朝のすべての和歌を掲載していて脚注も豊富、岩波版よりもこちらの方が絶対におトク(値段は高いけど)。岩波文庫版は読者が自由な解釈をできる点で申し分ないのですが、「悲劇の詩人」というレッテルをナシにして読むにはこちらの方がいいです。実朝自身は和歌に悲劇を持ち込んでないんです。
Nick Carraway
3
斎藤美奈子言うところの小林秀雄(コバヒデ)みたいに、ある朝、突然実朝の「世の中は常にもがもな渚こぐ海人の小舟の綱手かなしも」が、私に「降りてきた」。「常にもがもな」という平和への思い、「綱手かなしも」という庶民を愛する切ない思いが、痛いほど感じられて泣きたくなった。 こんな経験は古典を読んでから初めてだったので、実朝と霊的に混信したのだろう。その日が何日だったかよく覚えていないが、実朝命日の建保七(承久元)年正月27日は西暦のユリウス暦2月13日で、ちょうどそんな頃の体験だったと思うと不思議だ。 2018/02/24
Y2K☮
3
季節ごとに読んでいこうかな、と。正岡子規はこの人の和歌は力強いって評していたけど、公家然とした繊細なものや、想像の翼を広げた微笑ましいもの、そして恋の歌まで幅広い。でも間違いなく武人の香りはしない。三国志の詩人でいえば、曹操よりも曹植に近い。2012/01/09