内容説明
千年紀の王朝人の心もまた今と変わらずひたすら出世と一族の繁栄を願うあまり“就職活動”と受け取られる程に―ついつい才能をひけらかしてしまう。ミレニアム王朝人の心の綾を読む。
目次
第1部 土佐日記の勇み足(土佐日記に対する従来の誤解;土佐日記の三大主題とは;表層第一主題―年少男子に対する和歌初学入門書(その歌論展開)
中層第二主題―「申文」としての土佐日記の根幹記事(その社会諷刺) ほか)
第2部 紫式部日記の蛇足(前車ノ覆ルハ後車ノ戒メ;紫式部日記執筆の機縁、反面教師としての清少納言;『土佐日記』を完全に理解していた紫式部;紫式部日記の日記体記録篇(家記)と消息体評論篇(庭訓) ほか)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
星落秋風五丈原
11
名門出であることを自負する貫之と、己の才能を誇って自画自賛する紫式部。平安王朝きっての才人紫式部と紀貫之が自らの日記に吐露した文章は勇み足と蛇足に満ちたものだった。2000/05/05
サチ
1
ものすごく『土左日記』を読み返したくなる本。折角「孤本」で、しかも貫之直筆の面影を途轍もなく色濃く残しているんだから、もっと研究が進めばいいのに。2010/02/27
サチ
1
他にはあまり見ない視点。土佐日記=歌論説が面白い。2010/02/26
ひろただでござる
0
「土佐日記」は申文で「源氏物語」は遠回しの申文チックだったのが評判の大きさから長大恋愛小説に発展したのでは?と指摘されている。そうなんだよなぁ「源氏物語」は当時の世相や歴史を踏まえた恋愛小説にしか読めないんだよなぁ…何故一千年読み継がれたのか?藤原孝標女が日記にまで書いたような面白さが何なのかがさっぱりわからん。幼い娘を亡くした貫之の辛さは一千年以上経た今の私にも迫るものがある…のになぁ…。2015/09/23
Ayako Moroi
0
貫之が、土佐国を海賊に襲わせなかった優れたかつ清廉潔白な国司である、と書かれていて興味深く思った。また、土佐日記の末尾、荒れ果てた我が家と庭の松の木を見ての感慨と全く同じ経験を復員後にされたとのこと。そう考えれば、戦後大陸から戻ってきた方々の中に「数は足らでぞ」の例が、さぞかし多かっただろうことも想像される。2023/01/13