内容説明
ヨーロッパ絵画は、その空間観にしても物質観にしても顔料にしても素材にしても、伝統的な日本画とは本質的に異ったところがある。私がこの22人の画家を通して明らかにしようとしたのは、この異質の絵画を血肉化し、その全体のなかから、時には異質性そのものをバネとしながら新たなる世界を打ち立てようとした悪戦苦闘のあとであり、さまざまな危険と陥穴を乗りこえ、それぞれの個性に応じて作りあげた美しい成果である。
目次
第1章 近代的挫折と飛躍(近代化と闘いながら遡行した岸田劉生;非情なパリの石壁と格闘した佐伯祐三;すべて反対の手法で闘った藤田嗣治;闘わずして帰国した坂本繁二郎;没入をかさねた梅原龍三郎;油絵のイロハを出直した岡鹿之助;ノートル・ダームに立ち向った鳥海青児;未消化と流行の中で夭折した松本竣介;自らの戦争体験と闘った香月泰男)
第2章 凝視と超克(絵画の根源を志向しつづけた山口長男;安定の中の潜むものを凝視する脇田和;「ボタ山」を描いて西欧を乗りこえた野見山暁治;抽象表現主義的スタイルで闘った鶴岡政男;レアルな暗い空間に居続けた麻生三郎;孤立した抽象世界を乗りこえた井上長三郎;抽象表現主義を自在に歩んだ斎藤義重;なまなましい運動へと道を開いた田淵安一;ロマネスクと呼応する渡辺恂三;普遍的テーマを嗅ぎとった麻田浩)
第3章 版画家の格闘(物よりはいってその神にいたった長谷川潔;油絵を捨てて飛躍する池田満寿夫;銅版という不自由さと格闘した駒井哲郎)