感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
Mina
54
世界の名作が倉橋流にアレンジされた26篇。何ともエロティックな『人魚の涙』。 パロディ風『一寸法師の恋』と『新浦島』はとても愉快。やっぱり狸は残酷でした…『異説かちかち山』。ある朝 兄がゴキブリに!! カフカのアレンジは非情でした。盲目の醜い王女の話は谷崎の『春琴抄』より。バラエティ豊かで、「あれまぁ」という結末が多いのですが、単純に楽しむことのできる短編集でした。2014/11/22
とろこ
42
有名な童話や昔話を、著者流に解釈し、アレンジした結果生まれた掌編集。“残酷”な話も多いが、それよりもエロティックな描写が多くて辟易した。確かにこれは、『大人のための』残酷童話。映画であれば、Ｒ指定になるだろう。どの話もグロテスクで毒が多い。各話の最後に、太字で“教訓”が書かれているが、これがまたシュール。ただ、人間や人生の本質をついたものもあるので、中には、（元々こういう話だったかもしれない）と錯覚してしまうものもあった。とりあえず、子どもの頃に読まなくて（読まされなくて）よかった。2017/04/06
るんるん
41
世界や日本の名作、おなじみの「白雪姫」「浦島太郎」「一寸法師」などの登場人物が性、世論、欲望、体裁にとらわれて、うつろいやすい心を持った世俗的愚か者キャラクターへと変換させられている。セリフや展開には毒が満ちていて、短編集をつらぬく筆者の視点や意図に興味をおぼえる。仕上げの教訓めいた言葉も各話にピッタリ。思わずクスッと笑ったり。ぞおっとしたり。最後の１篇「人は何によって生きるのか」の暗黒世界も、ありえないはなしじゃないように思えてくる。ニュースできく現実や戦争の残酷さが頭をよぎる。2015/07/07
ヨーイチ
31
再読 珍しく単行本で所持。プロフィールに挙げてる割にコメントが手抜きってのは気持ち悪い。多分怪奇掌編で気に入って、これが倉橋由美子二冊目のはず。冷静で毒と批評を含み、月並みを忌避する文章に痺れた。遠藤周作による解説がまた素晴らしい。子供の読む物として最初に与えたら天才に育つかも。真っ当な市民に育たない可能性もある。俺の子じゃないから知ったこっちゃない。2015/12/24
柊渚
26
人魚姫や一寸法師といった名作童話から、なんと春琴抄やカフカの変身まで、たっぷりの毒が滴るパロディ掌編集。人間の悪意や淫猥な欲望が焙り出される様は、いっそ清々しいほど。ｴﾛﾃｨｯｸな描写が多かったので、なるほどこれは大人向けでしたね…🌝 打ち出の小槌で普通の人間並の背丈になれた一寸法師に向かって、お姫様が言い放った言葉に戦慄…。もし私が男性だったとして、女性からあんなこと言われてしまったら、きっと泣くかもしれない…笑。2022/02/01
