内容説明
入水自殺を図った若い女性は、記憶を失っていた。恋人だった青年は遠洋マグロ漁船の上にいる。二人の間に一体何があったのか―。運命をあらかじめ知っている人間はいない。しかし、はっきりとした確率があるとしたら。偶発的に誕生した遺伝子が特別の意味を持った時、恋人達はある宿命を背負い、日常の裂け目には一つの危うい人間関係が生じた。気鋭の作家が描く新しいミステリー。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ペペロニ
11
ホラーで有名だがそちらは未読でこれが初めての鈴木光司作品。精神を病み記憶喪失の女性を巡るミステリーかと思えば、マグロ船に乗った男の海洋冒険の如き物語が始まり面を食らったが、良い意味で先の読めない展開を楽しめた。また二人の物語が収斂していくラストが良く、力付けられる物語だった。2022/01/06
Mori
11
人の内面にある醜さと弱さが怖さとして伝わってくる。2021/04/20
Tetchy
10
入水自殺未遂で病院に担ぎ込まれた謎の女性の正体を、ミステリ仕立てで一枚一枚包まれたヴェールを剥がすかのように突き止めていく進め方から一転して鍵を握る人物、真木洋一の遠洋漁業を舞台にした物語など、恐らく作者自体が経験したであろうリアリティを伴って語られる。特に真木とさゆりとの同棲生活の件にて触れられる、狂人の振舞いとも思えるさゆりの不可解な行動、そしてその根源となっている病気の正体はなかなかに衝撃的だ。久々に知的好奇心をくすぐられる思いがした。感動な再開シーンの後に語られる皮肉な結末は不要かも。2010/02/06
うしこ@灯れ松明の火(文庫フリークさんに賛同)
9
入水自殺を図った女性が望月が勤務する病院に運ばれてきた。彼女は記憶を失っているどころか言葉も失っており・・。「リング」のイメージが強すぎてついホラー小説かなと思いながら読んだので、普通のミステリーだと分かった時はちょっと拍子抜けしたかな。でも彼女の身元が分かっていく過程やマグロ漁船の話はなかなか面白かったです。★★★2010/11/22
hiyu
6
意図はわからなくはない。だが、一体どこに救いを見いだせば良いのだろうか?さゆりが回復したとして、今度は別の葛藤がありはしないか?2019/06/08