内容説明
半月後に祝言を控えた愛娘が暴漢に襲われた―。定町廻り同心森口慶次郎は自刃した娘の遺書を懐に復讐に燃える。必死の捜査の末、犯人を追い詰めた慶次郎が見た光景は…。怨念と人情が絡まる表題作をはじめ、年に一度の高級料亭通いを生き甲斐とする日傭取り、無銭飲食を繰り返してはお情けを頂戴し蓄財に励む男など、江戸庶民たちの生きざまを見事に描き上げた七つの傑作短編集。
著者等紹介
北原亞以子[キタハラアイコ]
東京生れ。石油会社、写真スタジオに勤務後、コピーライターとして広告制作会社に入社。その間に、創作活動を開始し、1969(昭和44)年「ママは知らなかったのよ」で新潮新人賞、同年「粉雪舞う」で小説現代新人賞佳作を受賞。’89(平成元)年『深川澪通り木戸番小屋』で泉鏡花賞、’93年『恋忘れ草』で直木賞、’97年『江戸風狂伝』で女流文学賞をそれぞれ受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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BlueBerry
37
慶次郎縁側日記の発端となると言うことで読み始めた次第。人情小説7篇の短編集です。晴れやかな話しと言うわけでもないので割と苦手な感じだった。2014/01/16
suzu
8
うまい。江戸の生活感が自然。人のおもいあい方(上手く言えないけど)にも無理がない。二人の岡っ引きと同心のひとしくその上に雪が降るあたりの終わり方。そういうおもい方でこの年末をすごすことで、自分のこのもろもろ起きている何一つ片付かない日々を一段落しよう。そうしよう。2016/12/23
森の猫
7
慶次郎縁側日記は、せつなくつらい話しが多い、だからこそ、義理人情が深く身にしみるんだと思う。2014/11/23
山内正
5
勝手口から娘のおひでが帰った 昼前峯吉出た直後おひでも出たと 夜まで帰らないと言ってたのに あんまりじゃないのおっ母さんの言ってた通りにだ冷たい人と 十四年前に男を追って家を出、上方で女将を一目おひでに会いたいと 来たんじゃないの 何処が可哀想だ 娘が母の肩を持つとは 女の子の遊ぶ側で女が思い詰めた顔で話し掛けた 連れて行くつもりか 私子供が出来ないんですそれでと 家に戻るとおひでが見慣れぬ簪を おっ母さんに貰ったの おの女の家に木箱がうさぎ買ったの 十五夜に一緒に跳ねようと思って 女と女房が重なった2021/09/01
山内正
4
貯めた金を懐に風呂敷を持ち 多分戻って来ねえ この長屋に 一年前に来て貯めた金 軒下に親方が立っていた 国に帰ると昨日言ったからか 嫌な予感がする 国から戻ったら左官やらねえかと 一切を捨て歩き出した 松の木の幹から女が近づく 見知った湯殿の女おみちだ 何故そこにいたのか 小田原の父親と兄貴二人は左官 上が足場から落ち働け無くなり 借金してたのを見ていた 他の事をと江戸へ出た 春江亭の風呂が楽しみに金を貯めて一晩を楽しむ 部屋からみちと弟の借金話が 日雇の金も一緒だと出して 長屋に戻る事に2022/03/19