内容説明
昭和31年、熊吾は大阪の中華料理店を食中毒事件の濡れ衣で畳むことになり、事業の再起を期して妻房江、息子伸仁を引き連れ富山へ移り住む。が、煮え切らない共同経営者の態度に、妻子を残して再び大阪へ戻った。踊り子西条あけみと再会した夜、彼に生気が蘇る。そして新しい仕事も順調にみえたが…。苦闘する一家のドラマを高度経済成長期に入った日本を背景に描く、ライフワーク第四部。
著者等紹介
宮本輝[ミヤモトテル]
1947(昭和22)年、兵庫県神戸市生れ。追手門学院大学文学部卒業。広告代理店勤務等を経て、’77年「泥の河」で太宰治賞を、翌年「蛍川」で芥川賞を受賞。その後、結核のため二年ほどの療養生活を送るが、回復後、旺盛な執筆活動をすすめる
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ミカママ
439
輝やんのライフワークその四。とり憑かれたように読まされているが、面白いのだ、仕方ない。しかしなんだな、この熊吾という男、なにをするにも行き当たりばったりなんだな。ホントはあんまり頭良くないのかも、と思い始めてきた。ダンサーのあけみとの一件しかり、久保敏松の件しかり。いつにも増して、長崎のロシア人墓地、満州の凍土で、部下のための墓を掘る熊吾などなど、ビジュアル的にも読ませる作品であった。そしてあまり頭は良くないにしても、嫁を殴らなくなったことは高く評価しようと思う(笑)2019/01/12
KAZOO
143
この作品も第4部に入りました。様々なところでの生活が描かれるわけですね。今度は富山での生活です。子供との生活が結構描かれています。昭和30年代ということで私もこの時代は覚えています。最後に作者と児玉清さんの対談が収められています。最後まで児玉さんは読むことができなかったのですね。2017/06/02
takaichiro
87
輝さんのライフワーク「流転の海」第4弾。中華料理店をつぶし、また息子の伸仁に多くの自然に触れさせたいと熊吾一家は富山へ。伸仁の成長は著しく20分の落語を暗記、自分なりにアレンジまでして聞かせたりする。シリーズスタートは終戦直後の混乱の中、何とか生き延びようと汗と埃にまみれた大阪の情景ばかり頭に浮かんだ。あれから20年が経過。輝さんも55歳。血眼に生きる人間の闘争心より、小さな幸せを大事に、人の優しさが一番尊いものと諭すシーンが増える。人が年をとり熟す時間の流れを読み進めている感覚。まだまだ物語は続く。2019/08/25
ジェンダー
85
つくづく人を見る目を養うのは大事だと思いました。そして子供を育てるのが難しいと思いました。主人公が基本的にちょこちょこ仕事をしていたのもあり、お金に不自由していなかったのがついに来たなっていう感じではあるけれどいろんな情でお金をだしたり、一緒に事業を起こしていたけれど今回はお金を持ち逃げされる。しかもお金があんまり無い時にされるというのはつらいと思う。子供自体も親の背中を見て育つじゃないけれどどこかで子供でもこういう事をしても良いと感じしていまい、後で注意しないと行けない。言い方も注意しないと行けない。2014/08/09
chikara
83
「自分の自尊心よりも大切なものを持って生きにゃあいけん」「約束は守らにゃあいけん」「丁寧な言葉を正しく喋れにゃあいけん」「弱いものをいじめちゃあいけん」「なにがどうなろうと、たいしたことはあらせん」素晴らしい言葉達が勇気を与えてくれました!簡単な言葉に真理は宿るのか。 雪の宿で「天の夜曲」を聴いてみたい。2015/02/06