新潮文庫<br> 安楽病棟

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新潮文庫
安楽病棟

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  • サイズ 文庫判/ページ数 640p/高さ 15cm
  • 商品コード 9784101288130
  • NDC分類 913.6
  • Cコード C0193

内容説明

深夜、引き出しに排尿する男性、お地蔵さんの帽子と前垂れを縫い続ける女性、気をつけの姿勢で寝る元近衛兵の男性、異食症で五百円硬貨がお腹に入ったままの女性、自分を23歳の独身だと思い込む女性…様々な症状の老人が暮らす痴呆病棟で起きた、相次ぐ患者の急死。理想の介護を実践する新任看護婦が気づいた衝撃の実験とは?終末期医療の現状と問題点を鮮やかに描くミステリー。

著者等紹介

帚木蓬生[ハハキギホウセイ]
1947(昭和22)年、福岡県生れ。東京大学仏文科卒業後、TBSに勤務。2年で退職して九州大学医学部に学び、現在は精神科医。’79年に『白い夏の墓標』を発表、サスペンスの舞台を海外に据えた物語は直木賞候補となった。’93(平成5)年『三たびの海峡』で吉川英治文学新人賞、’95年『閉鎖病棟』で山本周五郎賞、’97年『逃亡』で柴田錬三郎賞を受賞した
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

nobby

92
15年介護業界で働く者として面白かった。本人・家族の語りから始まり、看護師目線で描かれる病院の日常の展開は、小説というよりドキュメント。そこに登場するエピソードはほぼ実体験ありなニヤリ満載で驚きはない。やたら亡くなるとは感じていたが、認知症の予後が10年前後と重ねられないことはない…最終章で明かされる告発はじめミステリに仕上げなくてもよかった気はする。“安楽死”“終末期”逃げてはならない提言に違いないが、認知症にそこを重ねているのが一番の違和感。2016/08/10

ちょこまーぶる

87
認知症の方々が入院する病棟の安楽な日常やケアの本質を勉強するうえでも良い本だなぁ~と思っていたら、最後に「ちょっと待ったぁ~」と叫んでしまうような一冊でした。読み進めていて、認知症の患者さんとかかわる機会のある者としては、主人公の看護師の認知症患者さんとの関わる姿や葛藤が非常に的確で、かつ実際のケアの場面で参考になることが多く看護学生に勧めても良いかな?と思っていました。しかし、最後は実に終末期医療の問題点を抉り出すミステリーとしてまとめてあり、簡単には勧められないぞと思いましたね。感慨深い本でした。2017/01/29

アッシュ姉

74
帚木さん10冊目。痴呆病棟へ入院する患者や家族の独白から始まり、新米看護婦の視点で痴呆病棟の日常が仔細に語られていく。これぞ白衣の天使、まさに天職である彼女の目線はつねに温かくて優しい。ケアすることで自分もケアされているとは何と素晴らしい意識であろう。終末期医療の現状と問題点を押しつけがましくなく、それでいてしっかりと問いかけてくる。考えさせられる一冊。久坂部さんの『神の手』に続き、安楽死を扱った帚木さんの作品を読了。オランダでの安楽死の実例がさらに詳しく語られており、その内容に慄然とする。(続く→)2016/04/18

Tsuyoshi

69
認知症病棟の話。患者達の入所に至った経緯から始まり、中盤からは真摯に患者に向き合う一人の看護婦の目線を通して病棟内の生活や患者達の様々な個性が描かれていた。このまま終わるかと思いきや最終項にて医者と看護婦の全く異なる価値観が露になる衝撃の展開が待ち構えていた。認知症患者に対する安楽死に関して6通りのパターンが提示されていたが個人的には「自発的積極的安楽死」が可能になるよう法整備して欲しい限り。2018/05/12

hushi亜子

56
15年ぶりの再読。安楽病棟とは痴呆病棟のこと。なぜ安楽というのか、私は痴呆の患者さんがこの病棟に入院していることが安楽につながっているからだと考える。前編に出てくる人たちの自身のことや、入院させることになる家族からの、その人の生い立ち、入院することになったこと、そして最期のこと。感慨深く読んだ。この手記が全ての最後の行動に繋がったのなら私は良いと思った。もちろん日本では許されていないが、ある意味これは尊厳死でもあるのではないかなと。2019/08/26

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