内容説明
夢にも見るほど憧れて慕う良寛さまに差し上げようと、今日も日がな一日七彩の絹糸で手毬をかがる若き貞心尼。―17才の秋に医者に嫁いで5年、夫の急死で離縁され24才で出家した長岡藩士の娘、貞心が、70才の良寛にめぐり逢ったのは30才の時だった。行商のいなせな佐吉に恋慕をぶつけたくなる貞心のもうひとつの心の安らぎと、師弟の契りを結んだ最晩年の良寛との魂の交歓を描く。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
はる
44
虚栄を嫌い、子供たちと遊びながら素朴な生活を愛した良寛。その良寛を心から恋い慕う若き貞心尼。ふたりの清廉な魂の交歓を、和歌を織り交ぜながら描きます。二人の関係はあくまで清らかなものですが、やっぱり瀬戸内さんの筆致はどこか艶っぽい。瀬戸内さんが貞心尼にわが身を重ねて、良寛との交歓を楽しんでいるように思えました。2017/03/14
さっちも
17
人の欲望はつきないのだし、やせ我慢や、あきらめが、その人の生を美しく昇華させるのかなぁっと思ったりした。節度とはなんだろうとかを、ガラにもなくあれこれ考えながら読んだ。仏教の深い理解や命題をしのばせたりもしているので、フトした一文に衝撃を受けたりする。良寛の宗教性や詩、生き方を深く敬愛する寂聴さんが、貞心尼の視点で描くことで、難解な良寛を読者と近づけようという試み。2018/11/15
銀の鈴
11
今から10年以上前に読みました。良寛さんのことを知りたかったため。
唯
4
お茶目で分け隔てなくて、どこか子供の様な良寛。彼の一挙手一投足を、都合良く肯定的に捉える盲目さが可愛らしい。彼のためなら何事にも目を瞑って愚かでありたいと願うかの様で、そこには、そう感じることすら烏滸がましく惜しく思えてしまえる程の崇拝が見て取れる。相手を美化することで自己卑下が募りナーバスになるのも、恋のあるある。仏門に入っても尚、拭い切れない人間の業をそのままに描く寂聴さんが好きだ。逃れられない死を如何に捉えてその後の人生を歩んで行くか、というのは長く生きながらえる者としての命題だったのだろう。2022/02/05
あさはる
3
良寛さん晩年の最期の弟子、若く美しい尼僧の貞心視点の物語。清らかなはずのお話なのにそこはかとなく漂う色気は寂聴さんならではなのかな?今更ながら初読み作家さんでした。2016/09/14