内容説明
級友が私だけを避け、仲間はずれにする。差別―その深い罪について人はどれだけ考えただろうか。故なき差別の鉄の輪に苦しみ、しかもなお愛を失わず、光をかかげて真摯に生きようとする人々がここにいる。大和盆地の小村、小森。日露戦争で父を失った誠太郎と孝二は、貧しい暮しながら温かな祖母と母の手に守られて小学校に通い始める。だがそこに思いもかけぬ日々が待っていた。
著者等紹介
住井すゑ[スミイスエ]
1902‐1997。奈良生れ。女学校中退後、投稿を始める。17歳で講談社の婦人記者に応募、採用されるが、一年で退社。19歳で農民作家犬田卯と結婚、農民・婦人運動に関わる。’35年、夫の郷里茨城県牛久沼畔に移り、四人の子と病身の夫を抱え、執筆と農耕で生計をたてる。’59年、夫の納骨の日に部落解放同盟を訪ね、大河小説『橋のない川』に着手、’73年までに第一部から第六部を刊行。一旦筆を置いたものの、’92年、90歳で第七部を完成
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
1 ~ 1件/全1件
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
遥かなる想い
106
中学時代に小遣いをためて、まず6冊読んだ。何も知らなかった自分に理由なき差別と、それに苦しむ人々の存在を教えてくれた記念すべき書物。その後7巻が出た時も小遣いから、買って読んだ。あの時の感性はどこにいったのか。その後、島崎藤村の『破戒』などを読んだ記憶がある。 2010/04/28
レアル
81
被差別部落のお話。当然ながら差別とは「する側」と「される側」で成り立つのだが、「する側」よりも悪いのが「傍観」だと昔教えられた事を思い出す。生まれた時から逃れられない苦しみ、そして自問しても尚答えが分からないいらだち。テーマも物語も重いが、読んでて胃の腑も重くなる。。登場人物達と共にこの問題を考えていきたい。2015/04/01
TATA
54
中学生の頃の担任が当時、感動した本として挙げていた作品。舞台は明治末期の奈良。作品の主題は部落差別なのですが、その中にあって主人公の少年たちの日常がどのようであったか、また、彼らが何をどう思ったかがきめ細やかに描写されていることに驚きを覚えます。主人公の逞しさ、そして弱さと、読んでて辛くなる描写も多いですが、だからこそ若い人達に読んでもらいたいと思う作品です。先生、ごめんなさい、あの頃読んでおけばよかった。2019/07/16
たか
51
明治、大正の被差別部落問題を扱っており、その内容は理不尽で、むごたらしく、日本人として心が痛む。 関西に住んでいると、現在でも部落問題は身近な問題として存在している。 非常に重いテーマではあるが、全編を通じて不思議と暗さがないのは、大らかで豊かな心のぬいとふで、支え合いながら健気に成長していく誠太郎と孝二の兄弟という、主人公一家の大きな家族愛に包まれているからであろう。 奈良盆地の美しい田園風景の描写も作品に温かみを添えている。これからの時代を担う若者に是非読んでもらいたい作品である。全7巻。C評価2018/05/06
Nobuko Hashimoto
42
このところ差別についても授業で取り上げるようになり、部落差別問題を扱った作品の代表である本作を手に取った。母や夫の蔵書に全巻揃っているのに読まずにいたのだが、予想以上に面白く、夢中で読み進めている。機が熟した感あり。まず、住井すゑの文章の巧みさ!するするするする読めてしまう(関西の方言に慣れない人には読みにくいかもしれないが)。食わず嫌いはあかんな。1巻は、被差別部落の畑中一家の長男・誠太郎の小学校生活が中心。気が強くて先生から睨まれがちな兄は、勉強はできるのに品行の点で評価を下げられてしまう。二巻へ。2021/07/16