内容説明
何者かによって父を殿中で殺され、家禄削減を申し渡された加乗与四郎が、事件の真相をあばくまでの記録『花杖記』。どんな場合も二の矢を用意せず、また果し合いにもあえて弱い弓を持ってのぞむ弓の達人の物語『備前名弓伝』。ほかに『武道無門』『御馬印拝借』『小指』『似而非物語』など、武家社会の掟の中で生きる武士たちの姿に、永遠に変わらぬ人間の真実をさぐった作品10編を収録。
著者等紹介
山本周五郎[ヤマモトシュウゴロウ]
1903‐1967。山梨県生れ。横浜市の西前小学校卒業後、東京木挽町の山本周五郎商店に徒弟として住み込む。1926(大正15)年4月『須磨寺附近』が「文芸春秋」に掲載され、文壇出世作となった。『日本婦道記』が’43(昭和18)年上期の直木賞に推されたが、受賞を固辞。’58年、大作『樅ノ木は残った』を完成。以後、『赤ひげ診療譚』(’58年)『青べか物語』(’60年)など次々と代表作が書かれた
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感想・レビュー
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KAZOO
106
お気に入りさんの感想を読んで手に取ってみました。山本周五郎の短篇は結構読んできていると思っていましたが未読のものばかりでした。中編ぐらいの長さがある表題作が印象に残りました。父親とあまりそりが合わなかった息子が、父親の死からその真相をあばいてかたき討ちをするという話でドラマにできるのではという気がしました。また最後にある「須磨寺附近」という作品は作者の処女作ですが全集には入れなかったということのようです。現代作品で若人の淡い恋を描いている感じで作者の作品とは思えませんでした。2023/07/16
じいじ
91
やっぱり周五郎モノはいいです。10篇どれも粒揃いで面白いです。親の敵討ちを描いた表題作が、78頁の中編ですがミステリー調で長編の読み応えがありました。父親が城中で乱心、刃傷沙汰に及んだとの罪で…。この事件が起きるまでは、親子の間にはミゾあった。父の死はおかしい? 何かウラがある…バカ息子の与四郎も目が覚めます。このまま汚名を背負ったままでは、犬死した親父が可哀そうだと立ち上がります……。他にもユーモア溢れる【似而非物語】など面白い話が満載の短篇集です。2023/05/28
nakanaka
59
10篇から成る短編集。表題作の「花杖記」も面白かったのですが、個人的にはユーモラスな内容の「似而非物語」がお気に入りです。とにかく怠け者の杢助が主人公で、彼にはパニックを起こすと発症する「くる目」という持病のようなものがあり、そんな彼が数十年ぶりに帰郷したところから話は始まります。ひょんなことから剣豪の身代わりになることとなり騒動に巻き込まれていくというもの。つい笑ってしまうような場面もあり楽しめました。それにしても、作者は魅力的な女性を描くのが上手だと作品を読む度に思います。2023/05/24
おか
42
はぁ 久しぶりの周五郎の世界❣良かったです。日本人でよかった(笑)表題作の「花杖記」はミステリー仕立てですが もう少しじっくりと読ませてほしかった。まぁ短編なので仕方ないですね。「武道無門」は良かった。臆病者の神髄を見抜いた領主もさすがだなぁと。「良人の鎧」う~ん ジレンマに陥る。(笑)「小指」男にとって女の小指って こんなにも印象的なんですね。「備前名弓伝」これは 私の好きな世界。秀でた男の意志を貫く その姿!それに尽きる「似而非物語」これは最高に面白かった。「逃亡記」う~ん ここまでしなくても➡続2024/03/18
金吾
28
○山本周五郎さんの武家物らしく、芯があり清々しい話が多いです。「武道無門」「備前名弓伝」が好きな話です。2022/04/01