感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
さっと
8
タイトルはシェークスピア『マクベス』の「人の生は歩く影にすぎぬ」より。ほとんどはベトナム戦争の従軍体験をもとにしたもので、あとがきによれば「かねてからこの一冊は何とかして作ってみたい本だった」という作品集。やっぱ『夏の闇』より『輝ける闇』だね、という方にはぜひおすすめしたい。個人的には最初の海外釣り行脚となった『フィッシュ・オン』で「割愛」された中近東・アフリカの最前線視察も含む「戦場の博物誌」がいい。それぞれの戦場の現場を、小説家の目に留まった生き物を媒介として象徴的に描く。連作長編で読んでみたかった。2019/06/23
モリータ
6
よく知っているモチーフが連続ででてくる「戦場の博物誌」が総集編、という感じでよかった。あと、「玉、砕ける」を読んであかすりに行きたくなりました(小学生並の感想)。2012/05/16
さっちも
3
ベトナム戦記は何度か読んでいる。開高さんのベトナム物を読むと、人間はおろかで愛おしいと感じれる。日頃忘れている生への執着を思い出させてくれる。、楽しみ、食い、快楽にふけり、ユーモアを忘れず、、、タナトスの中、エロスに富んだ、非日常下の日常。個々に精一杯生きる人達の群像劇が自分を元気にさせてくれる。正義をあまり語らない、開高さんの神的な視点が押しつけがましくなく好きだ。ただ、執拗でねちっこい描写が読み流したい気分の時にはしんどかった。また読み返すと思う。2015/09/01
LOHASPO
3
この短編集の中では「玉、砕ける」という作品が本当に素晴らしい。文化大革命後の中国知識人との交流を含め、現在のかの国のイメージとはまた違う当時の空気を感じる事が出来る。馬虎主義なる概念は今もあるのだろうか??2011/09/03
ねむ
2
ううむ、開高健作品にしては、めずらしく読了するのに苦労した短篇集。 まるで豊満な蟹の身のように、熱気と陶酔感がむっちりと詰まっているため、時間をかけてゆっくり読むのがよいのかなと感じました。 どれも秀作であることに間違いはないのですが、どの短篇も同系統の雰囲気を醸しており、正直、抑揚に乏しいことから、一篇読んでは、間を置き、一篇読んでは、間を置くというのが、ちょうどよいのかもしれません。多少、開高作品に慣れてからでないと厳しい短篇集であると思います。 個人としては、『飽満の種子』がお気に入りです。2014/02/08