内容説明
落ちぶれた愛人の源七とも自由に逢えず、自暴自棄の日を送る銘酒屋のお力を通して、社会の底辺で悶える女を描いた『にごりえ』。今を盛りの遊女を姉に持つ14歳の美登利と、ゆくゆくは僧侶になる定めの信如との思春期の淡く密かな恋を描いた『たけくらべ』。他に『十三夜』『大つごもり』等、明治文壇を彩る天才女流作家一葉の、人生への哀歓と美しい夢を織り込んだ短編全8編を収録する。
著者等紹介
樋口一葉[ヒグチイチヨウ]
1872‐1896。東京生れ。本名奈津。父則義は、元八丁堀同心で一葉誕生当時は東京府の下級官吏。1886年中島歌子の萩の舎塾に入門。’89年父の死で一家を担うことになり、姉弟子三宅花圃に刺激されて小説で生計を得ることを志す。’91年半井桃水に師事。貧困の中、’94年の『大つごもり』以降独創的境地を開き、『にごりえ』『十三夜』『たけくらべ』等で文壇に絶賛される。数え年25歳で結核に倒れた
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感想・レビュー
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yoshida
162
いつかは読みたいと思っていた樋口一葉。明治の市井の人々の哀切が描かれている。樋口一葉自身が苦しんだ貧困がその背景に横たわる。「にごりえ」で銘酒屋のお力と、お力に嵌まり込み、身を持ち崩し妻子を失った源七。お力の身の上といい、源七の暮らしの様子といい、息遣いが感じられるほどリアルだ。お力と源七の最期が衝撃的。「たけくらべ」では、吉原の大巻を姉にもつ14歳の美登利と、僧侶になる信如の淡く儚い恋が描かれる。この「たけくらべ」で気づくのは美貌の美登里が姉と同じく吉原で生きる暗示だ。遊女と僧侶。結ばれない二人。名著。2017/01/23
ゴンゾウ@新潮部
106
とても難しかった。あらすじを調べながらやっと読みました。だが、内容は当時の庶民の暮らしが女性の視点でリアルに描かれている。だからどの作品も決してハッピーエンドではない。当時の社会に無力であった庶民の姿が生々しい。次回は現代語訳で読みたい。2018/12/31
佳音
103
何回、何十回と読んでも名作。何度読んでも、正太、信如、美登利の心情発見がある。2017/10/11
ykmmr (^_^)
84
高校時代以来の再読。改めて読むと、やっぱり彼女は短歌の名手。言葉の選び方が美しく、文章作りの差し引きに長けている。皆、暗い話なのに、優しさを感じ、登場人物たちに心を通わせてしまう。学生時代はみどりと同じ目線にたち、今は歳の離れた姉気分で彼女を見る。美しさはそのままに、捉え方が変わって行く。その変化がまた素晴らしく、歳をとってまた読むと違うだろう。作者も恋心を抱いた男性がいたり、漱石の親類と縁談があったようだが、彼女の生涯も含めて、儚く散るその人生が、作品によく出ている。幸田露伴が認める若き才能。2021/08/23
佐島楓
61
「にごりえ」のみ読了。擬古文のため難しく、精読が必要。文章に一定のリズムがあり、昔はこういうリズムで物語を読んでいたのだろう、と想像した。2016/07/13