出版社内容情報
恋人はいま親友の妻。あなたならどうする? ラストシーンは、衝撃/納得? なお新鮮な問いを投げる、漱石渾身の恋愛小説。
長井代助は三十にもなって定職も持たず、父からの援助で毎日をぶらぶらと暮している。実生活に根を持たない思索家の代助は、かつて愛しながらも義侠心から友人平岡に譲った平岡の妻三千代との再会により、妙な運命に巻き込まれていく……。破局を予想しながらもそれにむかわなければいられない愛を通して明治知識人の悲劇を描く、『三四郎』に続く三部作の第二作。
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
馨
358
ボリュームのあるストーリーでした。後半〜クライマックスは、続きが気になり一気に読了しました。どの時代でも、夏目漱石が書いたとしても、やはり不倫はいろんな人を傷つけてしまい、当事者でさえ良いことがないなぁと思います。代助のその後が、とても知りたくなる終わり方も巧いです。2016/03/18
こーた
276
漱石の内でもとりわけ好きな小説だ。世間に対して万事理屈っぽく、そのくせ行動には起こさない。それがいざ事を起こすとなると、理屈は滅茶苦茶で、肝心のところはうまくことばで表すことができない。親という「世間」の卑劣さを憎み、自分だけは潔癖であろうと努めても、その卑劣さの産み出す豊かさに凭れかかって生きている。社会とのジレンマに悩み、矛盾を抱えて生きる代助の不器用さが愛おしい。かつて僕自身、いや今もかもしれないけど、代助のような状況にあった身としては、その生き方を甘えの一言で断じることなど、とてもできそうにない。2020/12/16
SJW
254
代助は高学歴で知識人でありながら定職にもつかずニートのような生活をしている高等遊民であるが、援助をしてもらっている父や兄を陰で馬鹿にして、理屈や哲学的な理由を並べたたて、働かないで結婚もしない自分を正当化したり、金を稼ぐために忙しくしているのは自己欺瞞だとか、賤民だとか断定していて前半は呆れるとともに唖然とした。この時代にはこのような遊民がいたらしいが、支配階級や貴族の真似をしていたのだろうか。後半は自分が友人に紹介して友人の妻になった三千代に引きずられていることに気がつき、その心の葛藤が多くを(続く)2018/04/20
まさにい
246
代助、男だね~。坊ちゃん、世間知らずと言われながらも、男を貫いたじゃないか!最後の鳥打帽をかぶって『門野、職を探してくる』と夏の日差しの中に出ていくところなんか、粋だよね。まだ、30歳。これからだぜ!と言いたくなる。一般には明治の知識人の悲劇なぞと言われているが、漱石は悲劇と思って書いたのだろうか。少なくとも代助は、生きる目的を見つけたのだから。僕は、代助の『それから』は明るいと思うのだが・・・・・・。2016/09/27
優希
195
恋人が親友の妻というのが意味深です。高等遊民の代助がかつて愛した三千代に再会したことで、運命が変わって行ったように見えました。実生活に根を持たず、狭義心から三千代と別れたのに、改めて愛に気付き、悩み、奪うと決意し、その愛に向かうのがリアリティを感じさせます。不倫愛というタブーに染まり、どんどん理性的を欠いていく様子は精神的に堕ちていったのでしょう。赤い血潮で始まり、ラストは昂揚による赤の波に呑まれるのは何かの暗示でしょうか。世界から醒めたとき、見る風景を込めての『それから』なのかもしれません。2015/09/16