出版社内容情報
継子いじめ物語の先駆作と恋愛の諸相を描いた十篇の短編物語集。
清少納言も楽しんで読んだという『落窪物語』は,娯楽に徹した平安時代の継子いじめ譚。 継母から落ちくぼんだ部屋をあてがわれ、「落窪の君」とあだ名された姫君が,美しさと心根の優しさで貴公子の愛をつかむ筋立てはシンデレラ物語そのものだが、本書のほうがペローやグリム童話より七、八百年も前に成立している。しかも魔法に頼らず、どこまでも現実的な描写は説得力に富み,待女あこぎの活躍や貴公子による継母への復讐戦なども痛快である。最後まで底意地の悪さを発揮する継母は滑稽ですらあるが、いまだにいじめの問題から解放されずにいる現代人の陰画ともみえる。 『堤中納言物語』は、平安後期以降の成立といわれる十編の短編物語集。他愛ない恋にはじまって,浮気や人違い、一風変わった姫君に起きた恋愛騒動や、遂げられぬ恋愛の悩みなど、恋の諸相が各編に描かれる。
三谷 栄一[ミタニ エイイチ]
著・文・その他/翻訳
三谷 邦明[ミタニ クニアキ]
著・文・その他/翻訳
稲賀 敬二[イナガ ケイジ]
著・文・その他/翻訳
内容説明
恋しい気持、いじめの衝動はいったいどうして起きるのか。浮気に人違い、幽閉に略奪、虐待、覗き見、復讐戦。千年前の風変りな恋物語。
目次
落窪物語
堤中納言物語(花桜折る少将;このついで;虫めづる姫君;ほどほどの懸想;逢坂越えぬ権中納言 ほか)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
クロメバル
12
『堤中納言物語』だけ。なかなかにおもしろい。「はいずみ」の最初の妻が家を出ていく場面で涙がじわっと。図書館で読んでいたので、恥ずかしかったなあ。2022/08/20
ドウ
3
堤中納言物語は、かつて講談社学術文庫で読んだので、落窪物語のみを読みました。継母にこき使われ虐げられる主人公の姫君が、イケメン少将と結ばれて出世するシンデレラストーリー。少将が継母に復讐するその激しさ、しつこさが面白いし、描写も生々しい(屎とか愛撫とか露骨な表現が多い)。落窪を助けるあこぎという機転の利く童(後に女房)がいるのが、アリババの話にも似ている。古今東西を問わず、面白い、読み継がれる物語には共通する要素が多いなあ、と思いました。2016/11/21
Arte
0
落窪から救出されてからの女君の夫の復讐が凄い、という話は聞いていたが、その復讐の後の、女君一族に対するえこひいき(摂関政治なんだから当然なのかもしれないが)も凄かった。源氏ほど現在流布されていないことでわかる通り、それほど面白い話とは思えなかった。 2005/07/30
ぽな
0
落ちくぼんだ部屋だから「落窪」って。りハウスしましょう。リノベーションしましょう。2012/09/19
ssanma
0
どちらも通しで読んだことは一度もなかったので。上段注釈・中段本文・下段現代語訳の三段組。// <落窪物語>海外作品や現代だと復讐からの和解で「幸せに華やかに暮らしましたとさ」で終わりそう。そうならないのは「読者の女房達の栄華への憧れ」?★★★// <堤中納言物語>趣味に明け暮れ見た目も気にしない「虫愛づる姫君」は現代にもいますね…。恋愛話ばかりではなく「貝合」「よしなしごと」のような話もあって、短編を通じてみると、この時代に生きた人々は確かに私の中に息づいているのだなあといみじう思ひていたり。★★★2018/11/22