内容説明
“夫殺し”の起訴事実を、すべて認めた被告弓丘奈緒子。執拗に無実を主張する原島保弁護士。犯行に使われたと思われる柳刃包丁を買ったのは奈緒子だ、と認める証人。殺された夫には愛人がいた。離婚話もあって…状況は被告不利に傾むいてゆく。だが、裁判の進行につれて明らかになる秘められた意外な真実とは。人間の心の気高さを謳いあげる感動の長編法廷ミステリー。第４１回推理作家協会新人賞受賞作。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
三代目 びあだいまおう
293
深い···読後すぐに抱いた感情。裁判所内の裁判シーンが全編を貫く。被告人は社長を殺害した罪に問われてる社長夫人の奈緒子。一貫して自白している奈緒子、状況証拠も整ってる。よくある警察の自白強要は皆無。裁判で求められるのは被告人奈緒子の量刑と情状酌量の余地の有無。しかし、裁判の場でたった一人被告の無罪を訴えた者がいる。被告自身も認めている罪に対して唯一無実を訴える人物。それが弁護人原島。原島が探偵役となり、閉鎖的空間の裁判所内で次々と明かされる真実！貫くテーマは重い。『絆』を前に、差し出す覚悟の尊さよ‼️🙇2020/08/31
遥かなる想い
95
第41回推理作家協会新人賞受賞作。法廷ミステリーだが、人間の隠された絆を強く描いていて飽きさせない。原島弁護士の描写がよい。被告弓丘奈緒子の過去を語らない毅然とした姿も妙に共感を覚える。2010/08/28
BlueBerry
62
割と好きな法廷もので所謂逆転裁判ですね。楽しく読めたと思います。感動も結構あってちょっとウルッとっきてしまいましたよ。冤罪ものも含めた裁判物が読みたくなる本ですね。2014/03/16
背番号１０＠せばてん。
51
【1988_日本推理作家協会賞】【1987_直木賞_候補】全編を法廷内のやり取りと司法記者の回想のみで構成された本書は、中盤で真相の大枠には想像がつくものの、それでもなお心に残る、読み応えのある１冊でした。特に、尋問最終日に登場する証言者のある台詞には、重いものが残ります。弁護側が証人を探し出す経緯や、殺人犯の娘となる長女への配慮など、描写が浅い部分も気になりますが、いくつかの普遍的なテーマを緻密に編んだ、心に残る良書でした。 ⇒2013/08/11
達ちゃん
44
まさに「絆」、このタイトルがすべてを表している気がします。読み応え十分の法廷ミステリーで、やるせなさ、切なさに心打たれました。良作です。2018/12/30
