内容説明
カトマンドゥの裏街でカメラマン・深町は古いコダックを手に入れる。そのカメラはジョージ・マロリーがエヴェレスト初登頂に成功したかどうか、という登攀史上最大の謎を解く可能性を秘めていた。カメラの過去を追って、深町はその男と邂逅する。羽生丈二。伝説の孤高の単独登攀者。羽生がカトマンドゥで目指すものは?柴田錬三郎賞に輝いた山岳小説の新たなる古典。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ehirano1
199
『氷壁(井上靖)』のエベレスト版を部分的に彷彿させ上巻は一気読みでした。山(=山に登ること)とは人生そのものなのか?どんな『解』が出てくるかとっても楽しみです!2019/10/12
レアル
161
読友さんにご紹介頂いた本。山岳小説。登山というものを全くした事のない私にとって、命をかけてまで山を登る人の気持ちはまだ分からないが、この本を読んで少しは感じ取れた気もする。登っている時の描写や山に賭ける男の想いがひしひしと伝わり、読んでるだけで息苦しくなってしまいそう。しかし、山への憧れや畏敬の念も十分伝わってくる。羽生の生き方もあまり共感も出来ないけど、これも一つの男の生き方なのかしら?この本は読友さんの言葉をお借りするわけではないが、登山に興味ない人でも面白く読める一冊。面白かったし、下巻に期待!2013/05/30
ぷう蔵
153
なぜ、人は山の頂を目指すのだろう。そこに山があるからと言う人がいたが、それが正解なのだろうか。今日も北アルプスの山々は悠然、泰然として我を見下ろしている。あの頂きに神々がいる。2016/07/27
みっちゃん
135
夢枕作品は【陰陽師】【黒塚】しか読んでおらず、作風の違いに驚く。やはり懐が深い。それにしても何と厳しい世界。正に死と隣り合わせ。登山の歴史を変えるかもしれぬカメラとフィルムを何故持っているのか?迂闊に近づけぬヒリヒリした強烈な個性の持ち主。彼が身を潜めるネパールの猥雑な喧騒に自分も身を置くような錯覚に囚われる。終盤は突如、サスペンスの様相を呈し、全く目が離せない。取り急ぎ下巻へ。2016/02/22
修一郎
130
実在した登山家二人をモデルにしたエヴェレスト小説,圧倒される読み応えだった。未踏峰ビッグジャイアンツが残っていたころの,昭和の山屋の面影を残す男たちの物語。昭和の山屋は死と隣り合わせだったのだ。エベレストの山々へのアタック,カトマンドゥの街なみ,ネパールの民族,みっちりと描きこまれているディテールが息詰まる臨場感だ。山岳小説はこうでなくちゃ。登攀シーンを端折るなんてのはもってのほか。カメラの謎に迫るところもなかなかのミステリー。続きは下巻で。2016/01/09