内容説明
真面目だけがとりえの貧乏医者が最後まで売らずに残したのは、蕪村の絵だった(「無用の人」)。日記の形で語られる、イギリス老貴族の悲痛な物語(「鶏鳴ついに…」)。武士の心情を美しく描く(「約束は雪の朝飯」)。カラーで収録したホイスラー、コロー、ターナー、池田遙邨、有元利夫など古今東西の名画19作品からインスピレーションを受け、書かれた物語は、粋な遊びごころに満ちている。
著者等紹介
林望[ハヤシノゾム]
1949年東京生。作家・書誌学者。「イギリスはおいしい」で日本エッセイストクラブ賞、「ケンブリッジ大学所蔵和漢古書総合目録」で国際交流奨励賞を受賞。エッセイ、小説、詩、能楽・自動車評論など著書多数(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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鯖
18
古今東西の名画からお話から着想を得ての短編集。売れない小説家が質屋に生原稿を売ったら、後日100倍の値で売られてるのを目にして、金庫と一緒に自分の生原稿と谷崎の生原稿も拝借し…、という「ドロボウ殿へ」が面白かった。自分の原稿は川に投げ捨て、でも谷崎のはどうしても捨てられずというとこが切ないね…。2015/05/03
yukioninaite
2
絵とは必ず一致しない話も多いけど、いろいろなテイストに書き分けられている話は、「文体の復権」と筆者がいうように文字の力の魅力を感じました。2016/11/23
しのぶ
2
小林清親から引っ張られて読みました。絵画から想起した物語という趣向は大大大好きで、それぞれ小説としては非常に好みでしたけど、もととなった絵を見ると、あれ? イメージ違うな…という印象でした。唯一ぴったりきたのは、下村観山の「倫敦之夜景」。もともと好きな絵なので、とても嬉しい。2015/05/19