講談社文芸文庫
欧州紀行

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  • サイズ 文庫判/ページ数 307p/高さ 15cm
  • 商品コード 9784061984639
  • NDC分類 915.6
  • Cコード C0195

内容説明

昭和十一年、ベルリン・オリンピック観戦のため、欧州へと旅立った横光利一。船上で二・二六事件の報に接し、パリでは人民戦線派と右翼の激突‐ゼネストに困惑する。スペインでのフランコ将軍の反乱、ドイツでのヒトラー支配の絶対化など、世界史の転換の最前線を直に知り、文明のあるべき姿を模索する赤裸で真撃な紀行文。戦時下に書かれた最後の大作『旅愁』を生み出す契機ともなった、時代精神の貴重なる軌跡。

目次

欧州紀行
静安寺の碑文
スフィンクス(覚書)
北京と巴里(覚書)
我等と日本

著者等紹介

横光利一[ヨコミツリイチ]
1898・3・17~1947・12・30。小説家。福島県生まれ(本籍地は大分県)。早大中退。在学中より小説を書き、1923年、「日輪」「蝿」で注目を浴びる。24年、川端康成らと「文芸時代」を創刊、新時代の文学として“新感覚派”の運動を展開。28年頃からプロレタリア文学とも激しく対立する。30年の「機械」は文壇に衝撃を与え、以降、心理主義的傾向を深める。35年、「純粋小説論」では、純文学における人間性の探究と、通俗小説における物語の興趣との融合を説いた(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。

感想・レビュー

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徒然太郎

5
誰かの旅行記が読みたいと思っている時に見つけた作品です。単純な紀行文というよりは横光利一さんのエッセイという感じの作品だと感じました。2016/01/23

hirayama46

1
タイトルは紀行ですが、内容は思索的な色合いが濃く、比較文化論的な文章といえそう。とはいえ、やはり旅をしているからには色々あって、パリで西条八十とばったりあったり、電車内でアンドレ・ジードを見かけたりとなかなかびっくりな体験をしております。しかし、オリンピックの観戦がメインかと思ったら、それはおまけ程度だったのですね……。ちょっと意外でした。2013/09/24

Shue*

1
横光という人は悲劇的な作家だなあとしか、言いようがない。 不安の影を払拭しようとするのに、西洋に渡って、理性で成立した国の様子に幻滅する様子が文章からひたひた伝わってくる。 そんな横光が、「スフィンクス」で示した通り、科学VS人間という二項対立を前に、「人間」へと軍配を上げ、猛進しながら戦時下を生きた愚かさを、私はどうしても否定できない。ほめられたものではなくとも、それが横光の誠実の姿だったのだろう。 戦後その辛酸を舐め尽くすように命を落としたことを、ゆめゆめ無碍してはいけないのだ。2008/11/10

1
メインの「欧州紀行」は結構面白い。短文で印象を書き連ねていくと、横光利一の作家としての思想の微妙さ(ある種の「頭の悪さ」と言い換えてもいいのかもしれない)が緩和されて読み応えのあるものとなっている。が、それ以外の思想的な面が多少でも入ってくるとこの作家は途端に微妙な文章しか書けなくなり、それが小説ならば不気味さを醸し出すこともあって面白いのだが、エッセイや評論の類となると単なる「国民作家」になってしまうのである。つまり、横光利一は優れた小説家ではあるのだろうが、思想家ではないということなのだろう。2012/03/07

tsusa

1
パリへ向かう船上や寄港地のできごと、ヨーロッパでの動揺やふさぎ込みや慣れや楽しみ、の部分が面白かった。パリで読んだけれど、戦前の知識層男性と似た感覚でものを見ることができるのは不思議だと思った。たとえそれが多分に文章に引きずられてのことであっても。でも、最後に収録されている論考は、地に足がついていない。日記では率直に彼我の差に感じ入っていたのに、なぜ戦争協力できたのか、時代状況こわいし、頑張ろうとする心もこわい。2011/09/18

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