講談社文芸文庫<br> 月光・暮坂―小島信夫後期作品集

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講談社文芸文庫
月光・暮坂―小島信夫後期作品集

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  • サイズ 文庫判/ページ数 388p/高さ 15cm
  • 商品コード 9784061984554
  • NDC分類 913.6
  • Cコード C0193

出版社内容情報

物語のあらゆるコードから逸脱し続ける作品世界

かつての作品の引用から、実在する家族や郷里の友人らとの関係のなかから、ひとつの物語が別の物語を生み出し、常に物語が増殖しつづける<開かれた>小説の世界。<思考の生理>によって形造られる作品は、自由闊達に動きながらも、完結することを拒み、いつしか混沌へと反転していく。メタ・フィクションともいえる実験的試み9篇を、『別れる理由』以降の作品を中心に自選。

小島信夫
私は、彼女がいなくなると、何か安心したように、いっきょに、たいへんな速さで娘時代から幼い頃へとさかのぼり、そのあたりのところに、自分が停滞するというか、そんな状態に見舞われた。その時代から、ゆっくりと先へ進みはじめ、不意に彼女がカチンと音を立てる。我に返ると、それがほかならぬこの私であった。――<「月光」より>

小島 信夫[コジマ ノブオ]
著・文・その他

山崎 勉[ヤマザキ ツトム]
解説

内容説明

かつての作品の引用から、実在する家族や郷里の友人らとの関係のなかから、ひとつの物語が別の物語を生み出し、常に物語が増殖しつづける“開かれた”小説の世界。“思考の生理”によって形造られる作品は、自由闊達に動きながらも、完結することを拒み、いつしか混沌へと反転していく。メタ・フィクションともいえる実験的試み九篇を、『別れる理由』以降の作品を中心に自選。

著者等紹介

小島信夫[コジマノブオ]
1915・2・28~。小説家。岐阜県生まれ。東京帝大英文科卒。1942年、入営し中国大陸に渡り、46年に復員。高校教師を経て、54年より明治大学に勤務。55年、「アメリカン・スクール」で芥川賞受賞。「第三の新人」として出発するが、独自の文学世界を構築。主な著書に『抱擁家族』(谷崎潤一郎賞)、『私の作家評伝』(芸術選奨)、『私の作家遍歴』(日本文学大賞)、『別れる理由』(野間文芸賞)、『うるわしき日々』(読売文学賞)、『残光』等(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

しゅん

15
後期小島信夫の特徴はよく言われるように話があらぬ方向に進んで物語が拡散していくため、読者が居場所の不透明さを常に感じること。もう一つ、それぞれの「作品」が別のものと連携しているため、小島信夫の執筆作品全体で不安定な蜘蛛の巣とも言える群像を形成していること。朴訥な講演録から日常の生々しさへと反転する「暮坂」はのちの『うるわしき日々』と強く関連しており、しかも書かれている内容が作者の人生と強く結びつきつつズレを孕むから、読んでると眩暈のような感覚に襲われる。まだまだ得体が知れず。2019/08/05

しゅん

14
再読してもよくわからないところはわからないから笑ってしまう。「返信」や「白昼夢」における物語の膝カックンにも笑ってしまう。小島信夫を読んでいると、視覚とか聴覚といった大まかな枠組みでは言い表せぬ感覚が刺激される。というか、そういった感覚を覚醒させて人の可能性を拡張するのが小説に出来る最良のことだ。世界の得体しれなさを感得するための訓練として、これ以上の作品はちょっと思い浮かばない。中央線で話しかけてきた男と死んだ弟の姿が重なってズレる「合掌」の、笑ってしまう気味の悪さよ。2019/09/10

フリウリ

12
「暮坂」において小島氏は、大きな小説のなかの小さなエピソード(大きなもののなかの小さなもの)に惹かれることのおもしろさ、そして、読み手がその小さな部分に執着していることが読み手その人を知るヒントに、かつ私たちが自分自身を知るヒントになる、と言っています。後期作品のなかから(小島の小説のなかにも登場する)山崎勉氏が小島氏と相談しながら選んだ作品集ですが、晩年の作品から小島氏を読み直ししているわたしにとっては、さまざまなつながりがみえて、楽しすぎる。小さな世界にみえて、無闇に大きい。大きすぎる。102024/01/02

たこ

6
一時期の朦朧とした作品群に比べると幾分大人しくなった著者後期作品集。どれもいい塩梅に混沌としているが、「返信」のすさまじさたるや。ぜひ読んで小島のカオスにビビりまくってほしい。小島の小説を読むと、その物語の自然な筋力に思いがいく。ふつう物語というものは自然と収束してしまうもので、拡散にはかなり意識的な作用が必要だと思うのだが(中上健次「地の果て~」)、小島はそれを軽やかに成し遂げてみせる。保坂が「ボケたように書く」と評していたが、それも文章のインナーマッスルあってこその事だろう。2019/08/13

borug

6
初読で話のとっ散らかり具合に乗れなくて嫌気さえしたけど読みなおしたら面白くなってきてしまうというタチの悪さ。2015/05/21

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