内容説明
冬至を控えて宿り木を採りに山に入る。赤い紐で根本を結び天井から逆さに吊るすのだ。昔、年末のパリの街かどで宿り木を求め孤独な年越をして以来、クリスマスの頃になると、こうして飾ることにしている。耳をひそめてしぐれをきき、目をこらして面影を追う日々―。洛中に生まれ育ちパリにすごした歳月の軌跡を描く重厚だが洒脱なエッセイから二九篇を厳選。
目次
洛中生息
取りこわし
湯
夏涼の法
虫の異変
釘を打つ
入浴
投銭
ホテル暮らし
パリの電球
植物園
竹
観劇
洛中通信
放生
宿り木
うつせみ
源氏のまぼろし
日記から
絵馬をあげる
メタモルフォーズ
心と身体
小走り
どくだみの花
一町まわり
鼬
京おんな
香木
文粋I 自序
著者等紹介
杉本秀太郎[スギモトヒデタロウ]
1931・1・21~。フランス文学者・評論家。京都市生まれ。生家は奈良屋の屋号をもち京呉服等の仕入商を営む旧家。京都大学大学院仏語仏文学専攻修士課程を修了、京都女子大教授をへて国際日本文化研究センター教授、現在は名誉教授。『洛中生息』で日本エッセイスト・クラブ賞、『文学演技』で芸術選奨・文学大臣新人賞、『徒然草』で読売文学賞、『平家物語』で大佛次郎賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
きりぱい
4
「洛中生息」「湯」「夏涼の法」とかいいな。京都は別荘避暑地という習性がないと言う友人の話とか、確かに祇園祭とか送り火とか夏の行事が続くものなあ。「入浴」から続く「投銭」「ホテル暮らし」「パリの電球」などパリでの話もいい。京大でフランス文学で京都とパリの話だから山田稔を思い浮かべていたら、巻末の写真で一緒に写っていた(眼鏡なしで毛がフサフサだ)。今年の五月に亡くなられていたとは。しかも杉本家は京町屋の重要文化財として保存されるすごい家なのだった。話に出た庭とか見てみたい気もするけれど特別見学1500円か~。2015/07/05
AR読書記録
1
セミといっても、にいにい蝉がいて、つくつく法師がいて、油蝉がいて、熊蝉がいる。こうしてより細かく、精緻に認識することによって、世界はますます豊かになる。私はまだまだ、ものすごく粗い目の網で世界を掬っているだけで、小さくともきらりとしたもの、価値のあるものをいっぱいこぼれさせながら、それに気づくこともなく生きているのだな、と、読みながら思いました。思わせられました。...という感想からはちと外れるけど、「電信柱」が面白くてなんかスキ。2014/01/24
utataneneko
1
蝶や蟬といった昆虫、庭の草花や宿り木のこと、京都やパリの、街のさざめきと静寂…。五感を研ぎ澄ましてつづられた、さまざまなエッセイを堪能できた。2009/03/06