講談社文芸文庫<br> 婉という女・正妻

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講談社文芸文庫
婉という女・正妻

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  • サイズ 文庫判/ページ数 383p/高さ 16cm
  • 商品コード 9784061984011
  • NDC分類 913.6
  • Cコード C0193

内容説明

土佐藩執政、父・野中兼山(良継)の失脚後、四歳にして一族とともに幽囚の身となった婉。男子の係累が死に絶えた四十年後、赦免が訪れ、自由となったものの、そこで見たのは、再び政争の中で滅びてゆく愛する男の姿であった…。無慙な政治の中を哀しくも勁く生きた女を描き、野間文芸賞、毎日出版文化賞を受賞した名作「婉という女」に、関連作「正妻」「日陰の姉妹」の二篇を付し、完本とする。

著者等紹介

大原富枝[オオハラトミエ]
1912・9・28~2000・1・27。小説家。高知県生まれ、高知県女子師範学校中退。17歳の時、教室で喀血し、10年近い療養生活を送る。その間、投稿を続け、「文芸首都」同人となる。1938年、「祝出征」が芥川賞候補となり、41年、上京。病を抱え、生計のために働きつつ小説を書き続ける。57年、「ストマイつんぼ」で女流文学者賞。以後、話題作を発表。64歳の時、カトリックに入信
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感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

ヴェネツィア

418
大原富枝は初読。毎日出版文化賞と野間文芸賞を受賞した「婉という女」がやはり代表作だろう。モデルとなった野中婉は父親(土佐藩の中枢にいた)の政治的失脚によって、4歳から43歳、に至るまで家族(母親、3人の兄弟、2人の姉妹、乳母)と共に幽閉生活を送るという特異な存在である。大原の描く婉は、史実を踏まえながらも実に見事な血肉化を果たし、歴史小説でありながら「今」を生きる女性像の造型に成功している。ことに優れているのは、婉の女としての感性と思維とにおいてである。それが読者に強い共感を呼び起こし、共に作品世界を⇒2022/10/21

樋口佳之

53
政治も理想も、すべては愛を通してしか、女には働きかける力はない/女性に限らないのでは。そう思える事が初出からの時の流れですかね/60年近く前のお話で、舞台は凄絶を極めるものですが、とても現代的、あるいは普遍的な政と生に関わるお話ではと読みました。これは凄いなあ。ご紹介に感謝。2022/10/22

michel

19
★4.0。女性作家ならではの、大作。父の失政により4歳から40歳まで幽閉された”婉”という一人の女一生。少女は身体の成長と精神の成長を自覚しつつ、抑圧せざるを得ないじりじりとした苦悶の日々を送る。母と兄弟姉妹たちだけの幽閉生活の中、婉は冷徹なほど強靭な精神力で、自身をこの犠牲から逸する。女の性って、本当に壮絶だな。私の中にも”婉”が眠っているのかな。凡そすべての女性には”婉”が棲む。男、政治、性…それらの犠牲になってはおられない。それらに歯向かい挑み生きる女は醜いほどに清廉だ。映画は岩下志麻。うん、納得。2020/07/23

きさらぎ

7
「婉という女」は野中兼山の娘を、「正妻」は妻を描く。妻が夫を、姑を、義祖母を、実母を、なさぬ仲の子供を見る目とか、4歳で幽閉された女が異母兄弟や母を見る目とか、そして何よりも彼女たちが自分の感情の動きを見つめる眼差しとか、古風で淡々とした語り口ながら実に生々しくいやらしく匂いが立ち上って来るというか皮膚に迫ってくるというか、とにかく読み応えがあった。作品としての評価は「婉」の方が高いようだが私は兼山に関心があることもあって、人物がまだしもちゃんと絡み合って展開する「正妻」の方が好き。2015/03/17

はんべぇ

7
婉という女・正妻・日陰の姉妹 の3編が入っており、野中兼山という類稀な土佐藩の家老の、それぞれ娘であったり妻であったりにスポットをあてている。兼山の墓がすぐ近所という自分には、知っている地名も多く、距離感も分かるので理解しやすかったが、兼山及び野中家については殆ど知らなかったので、本書に出会えて良かった。好みの本かというとそうではないけれど、お出かけ時の楽しみが増えたのが嬉しい。2014/10/20

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