内容説明
大衆的英雄『鞍馬天狗』を生み出す一方、『パリ燃ゆ』、『天皇の世紀』で歴史の中の人間像を精緻に描いた大仏次郎。折にふれて書かれた随筆は、多面的な文学活動の根っこにある、深い教養と批判精神に裏打ちされた人間大仏次郎の闊々とした人格の魅力を最もよく伝えている。随筆集『屋根の花』収載の四十三編に、歴史紀行『義経の周囲』から十編を付す。
目次
屋根の花
太郎冠者
正月休み
彼岸浄土
紅葉狩
朝の光
古本さがし
松下村塾
旅の誘い
飛鳥の春〔ほか〕
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
shinano
16
優しい人大佛次郎。そのことが随筆の中に、過去の事象への目線や歴史上人物への想像だったり、自分の目で見、肌で感じ、耳を傾けた風景に「やさしさ」が隠れん坊をしているのを感じる。 大佛を知る人々が、優しい人だったということがわかるようです。 友人のひとりであった直木三十五が「大佛くんは鳩のような目をしている」と。 猫を愛しんだおさらぎさん。冷たいと言われる猫に、猫の気持ちもわかってあげられる優しい心の目線がある人の随筆はどこか温厚だね。2018/12/20
キョートマン
3
奥州藤原三代の棺を開ける調査に立ち会った話をもうちょっと詳しく読みたかったな。ミイラの学術調査で、小説家って立ち会いに呼ばれるもんなんか?2024/04/12
TOKUMOTO
1
昭和中頃の随筆。身の回りのこと、旅のこと、同時代の作家のことなど。オルゴールや幻燈のことなど、今は関心を持たれなくなったものだけれど懐かしい。2015/03/24
すずき
0
京都、鎌倉、横浜…私と好きな街や好きな場所が似ていて面白かった。彼岸富士や古本さがし。大佛さんの普段が垣間見れて、のんびりした気分になれる。最後のほうのお悔みページは知らない人ばかりだったので調べてみたいなと思います。2012/03/05
ぴよぴよーーーーー
0
旅先での景色・周囲の文人や芸術家・身の回りの品々に関する随筆を収録。あとがきでも描写されているように、非常に優しくそれでいて周囲を客観的に捉えられる性格をしているのが伝わってくる。道沿いの花々や、寺の山頂から眺める夕陽といった自然的なものを慈しむ姿勢からもそれが味わえる。また、印象深いのは時代とともに消えゆくものを後世に伝播することを重んじている点。一冊通じて本当に色々な出会いがあった。小説家としても、読者にとっての水先案内人としても、非常に優秀な方だったのだろうなと窺える。2024/02/14