内容説明
鬱屈した心情と爆発するエネルギー―いつの時代にも変わらぬ若者たちの生態を鮮やかに描いた11篇。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ばりぼー
39
図書館で見つけたシリーズで、とりあえず第1巻から手に取りましたが、「青春の光と影」というテーマは選択ミスだったかも。これらの文豪が、若さゆえの焦燥、倦怠、虚栄、鬱屈などを描いた時よりも、自分の方が遥かに歳をとってしまったため、言葉が飾られているだけに何だか空々しい感じがしてしまいました。そうした中では、三島由紀夫「雨のなかの噴水」、宮本輝「暑い道」が◯。太宰治「眉山」、大江健三郎「後退青年研究所」は△。それ以外は…これでも一応国文科卒なんですが、歳とともに感覚が鈍磨したのかも知れません。2014/03/27
メタボン
32
☆☆☆★ 太宰「眉山」大江「後退青年研究所」三島「雨のなかの噴水」小川国夫「相良油田」は既読。大江のユーモアのある文体と太宰が描く腎臓結核の女中の姿が良かった。田中康夫「昔みたい」は結婚前の女性のモトカレとのやり取り、心情が現代風で、この短編集の中ではちょっと浮いた存在。一人の女性と幼馴染4人を巡る淡い性体験が印象深い宮本輝「暑い道」が一番良かった。救いのない性犯罪としか言えない石原慎太郎「完全な遊戯」は全く共感できなかった。金井美恵子「水の色」は女性の肌にあたる衣類の感触の表現が独特。2019/11/13
しゅう
23
11人の文豪による11篇のアンソロジー短編集。太宰治「眉山」と丸山健二「バス停」は涙を誘ってホロリときた。こういうのに弱い。いい小説だ。中沢けい「入り江を越えて」と宮本輝「暑い道」は高校生の性を描いていて切なかった。別の意味で印象的だったのが金井美恵子「水の色」。一応読んだが何が書いてあるのかサッパリ解らなかった。句点のほとんどない特殊な文体は大江健三郎を越えて難儀な代物だった。2020/12/11
メルコ
9
戦後に書かれた短編のなかで、青春の光と影という括りで選ばれた1編を収録。石原慎太郎の「完全な遊戯」、宮本輝の「暑い道」はかつて読んだことがあったが出色の出来。小川国夫の「相良油田」は発見だった。このような短編集は未知の作家と出会うきっかけになり、読んでいて楽しい、2018/03/15
踊る猫
9
再読。不勉強にして石原慎太郎氏の小説は本書に収められた「完全な遊戯」が初めてだったのだけど、読み終えて複雑な気持ちにさせられた。良くも悪くも倫理観を欠いた犯罪を生々しく描いていて、その淡々とした筆致に非常に苦い読後感が残ってしまったのだった。本書全体を評価するなら、無理矢理「青春」というテーマに押し込められている作品もあり、そのあたり難しいが中沢けい氏の「入江を越えて」が自分と波長が合うもののように感じられた。微細な描写が良い後味を残したのだ。それ以外では田中康夫「昔みたい」がイヤミではない佳品だと思った2016/07/26