内容説明
本郷菊富士ホテルの出逢いで始まったX子との関係は泥沼のような生活を強いた。真杉静枝の誘いで脱出にも似た台湾旅行から起こす下巻は、敗戦の日、八月十五日の感情で終る。戦時下の暗鬱と苦悩のなか、志賀直哉、青野季吉、中野重治らとの交流を通じ、自らの辛い日常、作家たちの風貌を鮮明に描く自伝的文壇回想記。野間文芸賞受賞「年月のあしおと」の続篇。上下二巻完結。
目次
台湾へ
富士丸
台湾ところどころ
その後のX子…
平壌 金史良のことども
作家と閣下の間違い
満洲の日本人
折角のチャンスを失った日本
開拓村に密着する満人部落
緬羊百頭を撲殺する〔ほか〕
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
月
7
★★★★★(「続・年月のあしおと」を読み終える。正・続の上下巻合わせて4冊を続けて読むも、読み進める手の止まることのない連作だった。続編・下巻は主にX子との泥沼で精神的にも崩壊寸前の危険な関係、太平洋戦争へと突き進む戦時下の生活、台湾・朝鮮・中華民国への訪問、志賀直哉や青野季吉、中野重治等との交流、そして終戦(8月15日)までが描かれている。特に戦時下の外国(台・朝・中)における現地日本人への人格の指摘は鋭い視点で描かれており、広津の日本の近代(政治)に対する痛烈な批評もなされている。) 2013/06/24