内容説明
川端康成の最初期から色濃い異性への思慕と、人間の孤独の、二つの源流を十一の短篇によって凝縮させた作品世界。旧制一高時代、初恋の女性への想いを書いた習作「ちよ」と、その頃の伊豆への一人旅を後年発酵させた「伊豆の踊子」。相継ぐ親族の死を幼時に体験した悲しみが生んだ「骨拾い」「十六歳の日記」「油」「葬式の名人」「孤児の感情」等に、亡き親への純化された思い出を一人称で綴る「父母への手紙」。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
佐島楓
74
次々と肉親を失うという経験が川端の根幹にあり、彼を理解しようと思うとこのあたりの初期作品は外せない。『父母への手紙』を読んで底なしの孤独に不覚にも落涙した。嘘だらけの手紙とあるが、川端自身の感情を乗せなければこのような文章は書けないだろう。暗黒を抱えながら生きていた作家。2018/05/08
あおさわ
4
ほのかな慕情と自信のもてない少年時代のあれこれ。「伊豆の踊子」以外は読みにくかったです;;2011/10/10
FA743
1
伊豆の踊子が生まれるまでの私小説のような話が多い。伊豆の踊子自体も川端康成の実体験に基づくものとは知らなかった。2014/03/10
聡太郎
1
既に亡くなった身近な人のことを想う作者の思考であるとか、感情の動きであるとか、そういうものが読んでいて胸に迫ってくる。「父母への手紙」とか、感動していいのか気味悪く思っていいのかよくわからない。異様な緊張感に満ちた作品集だと思う。2014/02/20
纏
1
『ちよ』に囚われた彼。孤児の感情を拭い切れない彼。親族の遺志を多く遺された彼。「篝火」と「伊豆の踊子」の情景が薄っすらと見えるようでした。恋と死に囲われた瑞々しい短編集。2013/08/15