内容説明
本書は魯庵の日記の明治二七年から四四年までの抜き書きであり、コラージュ的に新聞記事をそのまま貼りつけたり、実物大の名刺があったり、当時の生活風俗万般がそのまま記載され、いまでいう文化人類学的厚みをもった日記となっている。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
AR読書記録
4
何をした、誰が来た、で、「何となくむほんにんらしき」とか「どことなく悪るがしこそう也」とか辛辣な感想を添えたりしているはじめのうちは、魯庵なり明治文壇人なりのプライベートを垣間見る、覗き見的読書と思うのだが、最後のほうでは大逆事件による処刑の一報から、政府への批判が綴られ、時代の証言として厳粛な気持ちで読む。とはいえ、木やセルロイド製、あるいは丸型といった珍しい名刺や、鴎外が豆腐の宣伝文を書いてる(!)引き札を貼り付けてたり、あるいは骨董の騙し騙されとか、様々な方面への魯庵のアンテナ張り具合が一番面白い。2016/10/17